筑波大学大学院人間総合科学研究科博士課程修了。 博士(ヒューマン・ケア科学)。北里大学医療衛生学部視覚機能療法学助手,筑波大学大学院研究員,流通経済大学非常勤講師を経て,現在 明海大学外国語学部教授、 学生相談室カウンセラー。日本保健医療行動科学会副会長。専門領域は, 臨床心理学, 健康行動科学, 医療コミュニケーション。研究テーマは、大学生のメンタルヘルス支援,自己マスタリーやレジリエンス促進のための心理教育,生活習慣病の行動変容支援,大学生の運動習慣促進支援。現在は、オープンダイアローグやダイアロジカル・スーパーヴィジョンなど対話実践に関する研究に取り組んでいる。
基調講演(10月6日(日)午前)
縁側知のリフレクティング
講演者: 樋口 倫子 先生
(明海大学 教授)
多文化関係学会では、「縁側」知セッションなどを通じて、研究者、実践家がそれぞれの分野の持ち味を活かし、対話を通じて研究を発展させていくことが重視されています。具体的には、他者の発話をじっくりと聴き、熟考し、自分の考えや感想を返すというプロセスが大切だと思います。
近年、対話を促進させる「リフレクティング」の手法が注目されております。話すことと聴くことを分けて体験し、それぞれの役割を行き来することにより、自分が他者と話すこと(外的会話)と、他者の会話を聴くこと(内的会話)を区別しながら、相互理解を深めていきます。この手法は、専門職間のミーティング、職種間連携、地域座談会など様々な分野で応用されています。多文化共生、異文化間コミュニケーションの実践に関する「リフレクティング」の活用は、参加者同士で諸問題を認識し、内省を重ねて深く考察を重ねて、着想を得るための学びの機会となると確信しています。
今年度は、この分野でのご研究、ご講演、ワークショップにおいて豊富なご経験をお持ちの明海大学の樋口倫子先生をお招きし、リフレクティングの理論と実践を学びます。ご講演の後、デモンストレーションの後、参加者による演習を通じて、学びを深めて参ります。
「縁側知」 関東地区研究会特別セッション(10月6日(日)午後)
国際移動とコミュニティ形成:東アジアにおける横断的示唆
2024年度多文化関係学会の関東地区特別セッションでは、地理学の専門家を招聘し、主に地理学的観点から東アジアの人々の移動について検討する。人の移動とコミュニティの形成は多文化関係学の主なる研究テーマの一つであるが、地理学の分野でも研究の対象となっている。具体的には、移民の流れや移動パターン、移民が形成するコミュニティの空間的形態などを分析したり、特定の地域や都市に焦点が当てられている。
今回の特別セッションでは、周ブンテイ先生(広州大学)、申知燕先生(お茶の水女子大学)、根橋玲子先生(明治大学)をお招きする。周先生には、中国における日本人・韓国人のコミュニティの空間的分布とその形成要因ならびに中国の政府や地域社会の対応についてご発表いただく。申先生にはこれまでの韓国人の国際移動の状況についての説明、ニューヨーク、ロンドン、東京における韓国人コミュニティの特徴(共通点と相違点など)を紹介いただき、コミュニティ内の文化の継承についてもお話をいただく。根橋先生には討論者としてコメントをいただく予定である。
今回のセッションでは、人の移動とコミュニティの形成といった多文化関係学の既存の研究テーマに関して、地理学の研究者より移住者個人の選択と経験のみならず、異なる地域の政策や制度、文化的な背景の影響、地域社会側の対応など、新しい知見を提供していただく。また、このように、異なる分野の研究者同士の縁側での対話を通じて、既存の研究テーマに対するより深い理解と新たな解決策の創出が期待される。さらに、登壇者の話題提供に対して、参加者同士が対話する時間を設定する。その際に、登壇者も対話に加わり、実際に「リフレクティング」を体験する機会にしたいと考えている。
周 ブンテイ 先生
筑波大学大学院生命環境科学研究科人文地理学分野博士課程修了。博士(理学)。広州大学マネジメント学部・講師。専門領域は人文地理学。研究テーマは中国における外国人コミュニティの形成と変容。現在はエスニック集住地域やエスニック資源の活用などに関する研究に取り組んでいる。
申 知燕 先生
東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻博士課程修了。博士(学術)。お茶の水女子大学基幹研究院准教授。専門領域は都市地理学・移民研究。研究テーマはグローバルシティにおけるトランスナショナルな移住。現在は移住者の教育行動や性的マイノリティの移住などに関する研究に取り組んでいる。
根橋 玲子 先生
ミシガン州立大学大学院コミュニケーション学研究科博士課程修了。博士(コミュニケーション学)。明治大学情報コミュニケーション学部・専任教授。研究テーマは多文化共生。現在は日本で働く外国人やその家族、コミュニティに関する研究に取り組んでいる。