Past Talks

Friday, July 5, 2024, 16:00-17:00
Takuma Hayashi (Osaka Metropolitan University)

Title : Classification of simple supercomodules and the division superalgebras of their endomorphisms


Abstract : Lowey established the classification scheme of real finite dimensional irreducble representations of a group $G$ and determined their division algebras of endomorphisms in terms of complex finite dimensional irreducble representations of $G$ and their complex conjugation. This result is applicable to other settings, for example, finite dimensonal continuous representations of Lie groups, finite dimensional representations of real Lie algebras, and comodules over real coalgebras. In virtue of the work of Borel and Tits, analogous results hold for comodules over coalgebras with general base perfect fields by using the second Galois cohomology. We note that comodules are a purely algebraic counterpart of representations of affine group schemes.


Motivated by mathematical physics, super (i.e., $\mathbb{Z}/2\mathbb{Z}$-graded) objects have attracted physicists' and mathematicians' interest in recent years. For example, representations of "supergroups" (affine group superschemes) are basic objects. They are identified with supercomodules as in the non-super setting.


In this talk, we review the works of Loewy and Borel--Tits. Then I will explain their super analog.

Slides

Friday, June 21, 2024, 16:00-17:00

Naoya Hiramae (Kyoto University)

Title: On $\tau$-tilting finiteness of group algebras of semidirect products

Abstract: $\tau$-傾有限代数はDemonet--伊山-- Jassoにより導入された新しい有限次元代数のクラスであり,彼らは代数のタウ傾有限性がbrickの有限性やtorsion classの関手的有限性と関連があることを示した.それ以来,様々な有限次元代数に対して$\tau$-傾有限性が議論されている.有限群のモジュラー表現論における結果のひとつとして,有限群の群代数がtame表現型なら$\tau$-傾有限であることがEisele--Janssens--Raedscheldersによって示された.正標数$p$の体上の群代数が有限表現型やtame表現型になるための条件はSylow $p$-部分群の言葉で記述できることが古典的な結果として知られており,これの類似として,群代数の$\tau$-傾有限性がどのような部分群によって支配されているのかという自然な問いが生じる.講演者は,いくつかの特別な場合について,群代数の$\tau$-傾有限性が$p$-超焦点部分群によって決定されることを示した.本講演では,その中のひとつの結果として,アーベル$p$-群$P$のアーベル$p'$-群$H$による半直積群$P \rtimes H$の群代数の$\tau$-傾有限性について説明する.本講演は東京理科大学の小境雄太氏との共同研究に基づく.

Friday, June 14, 2024, 16:00-17:00

Masataka Chida (Tokyo Denki University)

Title : 保型L関数の二次捻りの中心値の非消滅について

Abstract : 保型L関数の二次捻りの中心値に関してはGoldfeldの予想をはじめとして様々な予想がある.本講演では素数判別式を持つ二次体による捻りの中心値に関するConrey-Keating-Rubinstein-Snaithの予想を紹介し,実際に彼らの予想が成立する例について述べる.(金沢大学の若槻聡氏との共同研究)

Friday, June 7, 2024, 16:00-17:00

Masayuki Sukenaga (Hiroshima University)

Title : Tropical lifting problem for the intersection of plane curves


Abstract : 非自明な付値を持つ代数閉体上の代数多様体に対し、各点の付値をとることでトロピカル多様体が得られる。二つの代数曲線 X, Y が与えられたとき、交わりをトロピカル化したものは X, Y それぞれをトロピカル化したものの交わりに含まれる。ここで、元の交わりが有限個であってもトロピカル化の交わりは一次元になることがある。そこで、トロピカル化の交わりの上の因子にどのような条件を付け加えれば X と Y の交わりのトロピカル化として得られるかを紹介する。

Friday, May 31, 2024, 16:00-17:00

Kenichi Shimizu (Shibaura Institute of Technology)

Title : Quasi-Frobenius algebras in finite tensor categories


Abstract : 本講演では、有限テンソル圏における相対セール関手と準フロベニウス代数の基礎理論を概説する。フロベニウス代数は、いくつかの線形写像が付随したベクトル空間であって、線形写像のテンソル積および合成を用いて組み立てられるある等式たちを満足するものとして定義できる。フロベニウス代数の定義をこのように書き換えることにより「テンソル圏におけるフロベニウス代数」を定義することが可能となる。さて、テンソル圏の研究および応用においては、テンソル圏におけるフロベニウス代数それ自身よりも、その加群の圏に興味がある場合も少なくない。このことにより、我々はテンソル圏におけるフロベニウス代数と「森田同値」な代数の考察へと導かれる。このような事情を受け、講演者は、有限テンソル圏と呼ばれるクラスのテンソル圏において「準フロベニウス代数」を定義した。もちろんこれは通常の環論における準フロベニウス代数を一般化する概念であり、期待されるように、有限テンソル圏における代数は、それが準フロベニウスであるとき、かつその時に限り、フロベニウス代数と森田同値となる。このことの証明において重要となるのが、加群圏の内部 Hom 関手を用いて定義される相対セール関手である。ベクトル空間の圏で考える場合は相対セール関手は中山関手と一致し、一般の場合においても中山関手との間に簡単な関係式がある。実は準フロベニウス性は相対セール関手の可逆性とも同値である。また、考えている有限テンソル圏に少々の付加構造を仮定すれば、その圏における「対称フロベニウス代数」も定義されるが、それもまた相対セール関手によって特徴づけられる。

Friday, May 10, 2024, 16:00-17:00

Xi Tang (Guilin University of Aerospace Technology)

Title : Cograde condition and codominant dimension


Abstract : The classical theory of dominant dimension was introduced by Tachikawa to study QF-3 algebras. The notion of dominant dimension is closely related to the famous Nakayama conjecture, which says that if an artin algebra has infinite dominant dimension then it should be self-injective. Meanwhile, dominant dimension is used to study double centralizer properties and classify certain algebras.


In this talk, we will introduce a categorically dual notion, namely codominant dimension with respect to a semidualizing bimodule. We will discuss the left-right symmetry of codominant dimension for a semidualizing bimodule by means of the (strong) cograde conditions of modules. We apply this result to investigate the left or right exactness of some double functors. In particular, a new equivalent characterization of (n-)Auslander algebras is given. Finally, we shall consider the relation between the relative dominant dimension of each projective module and the relative codominant dimension of each injective module.

Friday, April 19, 2024, 16:00-17:00

Yoshimune Koreeda (Hiroshima University)

Title : Jet scheme of singular surfaces of rational double points


Abstract : 代数多様体から``jet scheme”と呼ばれるschemeを構成することができる。このときjet schemeから元の多様体へ切り詰め射と呼ばれる射が自然に存在する。この切り詰め射による特異点のファイバーは特異点の情報を反映していることが期待されている。

例えば、曲面上の有理二重点の場合に最小特異点解消の例外曲線と特異点上のファイバーの既約成分の個数が等しくなることが知られている。

本講演ではjet schemeについて説明をし、特異点上のファイバーの既約分解の方法を説明する。また、時間があれば特異点上のファイバーの情報から特異点解消グラフを再構成する方法を説明する。

Friday, January 26, 2024, 16:00-17:00


Kohta Gejima (Osaka Metropolitan University)


Title: 楕円カスプ形式のフーリエ係数からなるある行列の正則性について


Abstract: 保型L関数の特殊値の研究において、保型形式のフーリエ係数からなる行列の正則性が問題になることがある。本講演では、楕円カスプ形式のフーリエ係数を成分とするある行列が正則であることを紹介する。また、時間が許せば、そのような行列がランキン・セルバーグL関数の臨界値の明示公式および代数的整数性と関係することを説明したい。

Friday, January 5, 2024, 16:00-17:00

Kento Fujita (Osaka University)


Title: On the Calabi problem for Fano varieties


Abstract: ファノ多様体にいつケーラー・アインシュタイン計量なる「良い計量」が入るかという所謂Calabiの問題は、K安定性なる代数的安定性条件と同値であることが知られている。この講演ではK安定性の簡単な言い換えである(Chi Li と独立に得られた)「付値判定法」及びその応用を紹介する。更に時間が許せば最近の進展や、講演者およびAraujo, Castravet, Cheltsov, Kaloghiros, Martinez-Garcia,Shramov, Suess, Viswanathanとの共同研究で得られた結果等をサーベイ形式で紹介したい。

Friday, December 15, 2023, 16:00-17:00


Tsutomu Nakamura (Mie University)


Title: Pure-injective modules, Ziegler spectra, and big Cohen-Macaulay modules


Abstract: 任意の可換ネーター局所環がBCM(=big Cohen-Macaulay)加群を持つというHochsterの予想は,可換環論において40年以上未解決であった.この予想がAndréの2018年の仕事で肯定的に解決されたことを機に,近年ではBCM加群の研究や応用が盛んに行われている.一方で,任意の完備ネーター局所環が(有限生成)極大CM加群を持つというsmall CM予想は今だに未解決である.

BCM加群の存在性を踏まえると,「直既約なBCM加群は存在するか」という自然な問が考えられる.これはsmall CM予想が肯定的に解決されれば自明になるが,無限生成を許すBCM加群の存在性からは,直ちには分からない.

本講演の前半では,純単射(pure monomorphism)に対して移入加群のように振る舞う「純移入加群(pure-injective module)」というクラスに焦点を当て,その背景や基本的事実,よく知られた例などを紹介する.後半では,コンパクト生成三角圏における純性(purity)の理論に触れ,その応用として,(BCM加群の存在性から)直既約かつ完備なBCM加群の存在性が導けることを紹介する.

Friday, December 8, 2023, 16:00-17:00


Yoshinori Kanamura (Keio University)


Title: ある種数1の曲線族における有理点を持つものの割合について


Abstract: Bhargavaはz^2=f(x,y)(f(x,y)は整数係数2元4次形式)で表される種数1の曲線全体で有理点を持つものの割合が正であることを示した。この結果を示す際、楕円曲線全体の族で2-Selmer群の平均位数を決定したBhargava-Shankarの結果が重要な役割を果たした。その後、Bhargava-Hoは楕円曲線の特定の部分族で2-Selmer群の平均位数を決定し、上記の種数1の曲線族の中でも特定の部分族で有理点を持つものの割合を特定した。本講演では、先行研究で扱われている種数1の曲線族より更に小さな部分族で、有理点を持つものの割合を評価することを考える。

本講演は九州大学IMIの石塚裕大氏との共同研究に基づくものである。

Friday, November 10, 2023, 16:00-17:00


Hideyuki Ishi (Osaka Metropolitan University)


Title: Irreducible decomposition of the natural representation of a permutation group with probability one


Abstract: 与えられた置換群の自然表現を実数体上で既約分解する問題を考える.この既約分解は多変量解析において成分間の置換対称性を仮定する統計モデルを考える際に重要な役割を果たしている.(cf. <https://projecteuclid.org/journals/supplementalcontent/10.1214/22-AOS2174/aos2174supp.pdf>)

本講演では,確率1で一つの既約分解を数値的に計算する実用的なアルゴリズムを紹介する.

Friday, October 13, 2023, 16:00-17:00


Kazuto Ota (Osaka University)


Title: 反円分拡大におけるCM楕円曲線のTate-Shafarevich 群の漸近挙動


Abstract: Mazurらの仕事により、楕円曲線のTate-Shafarevich群のZp拡大における漸近的な振る舞いは、pが通常的な場合には非常によくわかっている。一方で、pが非通常的なときは設定 (どのようなZp拡大を考えるかなど) によって振る舞いが異なり、まだまだわからないことが多い。本講演では、非通常的な場合の反円分Zp拡大におけるCM楕円曲線のTate-Shafarevich群の振る舞いに関して得られた結果を紹介する。この講演は、Ashay Burungale氏 (テキサス大学オースティン校) と小林真一氏 (九州大学) との共同研究に基づく。

Friday, October 6, 2023, 16:00-17:00


Atsushi Yamaguchi (Osaka Metropolitan University)


Title: Representations of groupoids and generalized homology theory


Abstract: 一般(コ)ホモロジー論のある意味での「親玉」である複素コボルディズム論と呼ばれるホモロジー論には,Hopf algebroid と呼ばれる次数付可換環の対が付随し,これらで表現されるアファインスキームの対は,次数付可換環の圏から,1変数形式群とその間の厳密同型なる亜群の圏への関手になる.さらに素体を係数とする常ホモロジー論,K-理論や楕円的ホモロジー論など,複素コボルディズム論の「子分」である種々のホモロジー論にも Hopf algebroid が付随して,これらが表現するアファインスキームは1変数形式群とその間の厳密同型なる亜群の「部分亜群」に(ほぼ)なっており,これらのホモロジー論は位相空間の圏から,付随する Hopf algebroid 上の余加群の圏への関手である.Hopf algebroid 上の余加群はその Hopf algebroid で表現される亜群の表現と考えられることから,本講演では複素コボルディズム論を「親玉」とする一般ホモロジー論のなす圏を亜群の表現の圏として理解するために,ファイバー圏の概念を用いて亜群の表現の概念を定式化して,正則表現,誘導表現の構成について解説する.

Friday, July 14,  2023, 16:00-17:00

Ichiro Shimada (Hiroshima University)


Title:K3曲面の自己同型群の計算について

Abstract:階数26のユニモジュラー偶双曲格子に関するコンウェイの理論を用いて

K3曲面の自己同型群を計算する方法を解説する.

コンウェイの結果はピカール数26の仮想的な(実在しない)K3曲面についての

幾何学的主張と解釈することができる.

ここから実在するK3曲面の自己同型群をどのように導くかを説明する.

Friday, July 7,  2023, 16:00-17:00

Shinichi Kobayashi (Kyushu University)

Title: 局所Z_p-拡大に付随するリゾルベントのp進付値について

Abstract: リゾルベントはGalois module theoryで重要な役割を果たす基本的な対象である. 講演者はテキサス大学のA. Burungale氏と大阪大学の太田和惟氏と共同で, 局所体のZ_p-拡大の中間体に伴うリゾルベントのp進付値を決定した. 円分Z_p-拡大のときは, リゾルベントは古典的なガウス和に他ならず, ガウス和のp進付値を決定する問題である. 円分Z_p-拡大の場合は具体的な計算で決定可能だが, 一般のZ_p-拡大の場合は分岐理論を用いて決定する. また応用として, 惰性的素数pにおける反円分Hecke L-値のp進付値に関する結果を紹介する.

Friday, June 30,  2023, 16:00-17:00

Masafumi Hattori (Kyoto University)


Title: On boundedness and moduli spaces of K-stable Calabi-Yau fibrations over curves

Abstract: K安定性は一定スカラー曲率K\"{​​​​​​a}​​​​​​hler計量の存在条件と同値であろうと予想され,複素微分幾何で導入された純代数幾何学的概念である.しかし,Fano多様体のK安定性の$\delta$不変量による判定法が発見され,klt log Fano対のK-moduliが構成されるなど,log Fano対におけるK安定性の代数幾何学的研究は近年めざましい発展を遂げた.しかし,2010年に尾高氏によるK-moduli予想,K-poly安定な多様体をパラメトライズするモジュライ空間の存在は他の多様体のクラスでは解決していない.本講演では,曲線上のCalabi--Yauファイブレーションの一様断熱K安定性という概念を導入し,一様断熱K安定性が底空間のK安定性と一致すること,そして一様断熱K安定性を用いた曲線上のCalabi--Yauファイブレーションのモジュライ空間の構成を紹介する.本講演は橋詰健太氏との共同研究に基づく.


直後に同じ場所,zoomで以下のOCAMI微分幾何セミナーもあります.

https://www.omu.ac.jp/orp/ocami/activities/seminars/dg/


講演者:村上 怜 氏(東北大学)

Title: ファイバー空間上のJ方程式

Abstract: Kahler幾何において,定スカラー曲率Kahler計量(cscK計量)の存在問題は一つの中心的問題である.

Dervan-Sektnanは,正則沈め込みの全空間上で,底空間とファイブレーションでの適切な仮定の下,cscK計量の存在を示した.またJ-方程式とは,cscK計量の存在問題の研究においてS.K.DonaldsonとX.X.Chenにより導入された偏微分方程式である.ある条件下ではJ-方程式の解の存在はcscK計量の存在を意味するなど標準計量と関係があり注目されている.本講演では,J-方程式に関するDervan-Sektnan型の結果が得られたのでそれを紹介する.



June 23, 2023.

 Yuichi Ike (Kyushu University)

Title: 超局所層理論とシンプレクティック幾何学

Abstract: 柏原とSchapiraにより構築された層に対するモース理論ともいえる超局所層理論は,近年シンプレクティック幾何学への応用が進んでいる.先駆的な仕事として,Nadler--Zaslowは超局所層理論に基づいて構成可能層の圏と深谷圏の圏同値を示し,Tamarkinはある層の圏を用いてハミルトン微分同相写像による非分離性の十分条件を与えた.これらをはじめとするいくつかの結果から,層理論だけを使ってもシンプレクティック幾何学に様々な側面からアプローチできることが期待される.この講演では,Tamarkinが用いた層の圏のHom空間を使って,ハミルトン微分同相写像による分離エネルギーを下から評価できることを説明する.証明は,パーシステントホモロジー間の代数的な距離の類似物を層の圏に導入して,この距離のハミルトン安定性を証明することで行う.時間があれば,この距離の完備性とC0シンプレクティック幾何学への応用についてもお話ししたい.浅野知紘氏との共同研究に基づく.


Friday, June 9, 2023, 16:00-17:00

Teppei Takamatsu (Kyoto University)

Title: On the structure of semi-infinite Deligne-Lusztig varieties and affine Deligne-Lusztig varieties for GSp

Abstract: Deligne-Lusztig理論とは、有限簡約群の表現を、Deligne-Lusztig 多様体(DLV)という代数多様体のl進コホモロジーに実現する理論である。Lusztigは、同様の構成がp進体上でも有用であると予想した。Deligne-Lusztig多様体のp進体上の類実物として、semi-infinite DLVと affine DLVの二つが考えられる。Chan-IvanovはGLに対するこれらの類似物の(σ-)線形代数的な記述を与え、semi-infinite DLVが affine DLV のある種の逆極限であることを示した。更に、affine DLVの詳細な構造の研究を行った。本講演では、彼らの結果の GSp の場合の類似を説明する。

Friday, June 2, 2023, 16:00-17:00

Takenori Kataoka (Tokyo University of Science)

Title: CM体の類群のマイナス部分のGalois加群構造について

Abstract: 代数体の類群は,数論において重要な研究対象である.本講演の主題は,CM可換拡大に対し,類群のマイナス部分を有限Galois加群として考察することである.

講演者は,Cornelius Greither氏との以前の共同研究において,群環上の有限加群の圏に,新たな同値関係の概念を導入した.この同値関係は,コホモロジー的に自明な加群をゼロとみなすという考えで定義されており,応用として類群のFittingイデアルを可逆イデアルの差を除いて考察する際に有用である.

本講演では,この同値関係に関して類群がとりうる同値類を,従来より詳細に考察する.具体的には,類群がとりうる同値類が,ある(小さな)部分モノイドに入ることを示し,さらにその部分モノイドの構造を考察する.また,類群の構造への明示的な応用についても紹介する.本講演はCornelius Greither氏との進行中の共同研究に基づく.

Friday, May 26, 2023, 16:00-17:00

Shunya Saito (Nagoya University)

Title: Classifying torsionfree classes of the category of coherent sheaves and their Serre subcategories

Abstract: アーベル圏(あるいは三角圏)の部分圏の分類は環の表現論や代数幾何学において活発に研究されているテーマの一つである.最も古典的な結果は,1960年代のGabrielによるSerre部分圏(=商,部分対象,拡大で閉じる部分圏)の分類である.彼は連接層の圏のSerre部分圏をスキームの特殊化閉部分集合を用いて分類した.可換環上の加群圏の場合にはさらにトーション類(=商,拡大で閉じる部分圏)やトーション・フリー類(=部分対象,拡大で閉じる部分圏)など様々な部分圏が完全に分類されている.今回の講演で紹介する主結果の一つは,これらの可換環上の加群圏に対する部分圏の分類の連接層の圏への拡張である.素朴な拡張は射影直線の場合ですら成立しない.そのため,直線束とのテンソル積で閉じる部分圏を考察し,この性質を要請することで連接層の圏の様々な部分圏が可換環上の加群圏の場合と同様に分類できることを紹介する.

またこれらの分類を用いて,一次元Cohen-Macaulayスキーム上の極大Cohen-Macaulay層の圏の(Quillen完全圏の意味での)Serre部分圏がスキームの既約成分を用いて分類されることを紹介する.これは直ちに一次元Cohen-Macaulay環上の極大Cohen-Macaulay加群の圏や,被約射影曲線上の極大純層(maximal pure sheaf)の圏のSerre部分圏の分類を与える.ここで極大純層とは,可約なスキーム上へのベクトル束の自然な一般化であり,非特異曲線に対しては,ベクトル束と一致する概念である.


Friday, May 12, 2023, 16:00-17:00

Shinnosuke Okawa (Osaka University)

Title: Blowing down noncommutative cubic surfaces

Abstract: 古典的な代数幾何学の非可換化として、2001年にVan den Berghは非可換曲面のblow upを定義し、特に非可換射影平面の6点blow upがある種の非可換3次元射影空間(ncP3)の3次曲面になることを証明した。非可換射影平面の6点blow upに対してその埋め込み先のncP3を対応させることで両者のモジュライ空間の間の射を得るが、本講演ではこの(有理)射の構造を決定したという結果を紹介する(Ingalls, Sierra, Van den Berghとの共同研究に基づく)。この結果(の証明)を使うと、上述のncP3に含まれる被約な非可換3次曲面が全て非可換射影平面の6点爆発に同型であるという「逆」の結果が証明できる。

証明の中心は非可換3次曲面上の直線の(大域)モノドロミーを調べることにあるので、これについてポイントを説明する。また、この話の古典極限に相当する具体的なポアソン幾何との関連にも触れる。

slides

Friday, April 28, 2023, 16:00-17:00

Ken Nakashima (Okayama University)

Title: 連結PDの理論とその実用化へ向けた取り組み

Abstract: 「位相的データ解析(Topological Data Analysis,  TDA)」とは、トポロジーの知見を用いてデータ解析を行おうという応用数学の1分野です。代表的な手法として「パーシステンス図(persistence diagram,  PD)」という、解析対象のデータに「どのような“穴っぽい構造”がそれぞれどれくらい含まれているのか」を可視化できる道具があり、現在、これをさらに強力な道具にするための方法論が(とくに、クイバーの表現論など、純粋数学の立場から)さかんに研究されています。本講演では、そうした動機から生まれた「区間近似」の理論と、その可視化である「連結PD」について解説し、材料科学など応用の現場への実戦投入に向けた取り組みについてお話します。

Friday, April 21, 2023

Kenta Sato  (Kyushu University)


Title: 正標数の3次元多様体におけるBertiniの定理


Abstract: 与えられた射影多様体Xについて, Xの諸性質が, Xのgeneralな超平面切断に遺伝するかどうか, という問題を考える.

標数0においては, 多くの特異点のクラスはgeneralな超平面切断に遺伝することが知られている(Bertiniの定理)が, 正標数においてはほとんどのクラスで未解決である.

本講演では, Xが正標数の3次元の場合において, kltやlcといった特異点のクラスが切断で保たれることを示す.