安場 健一郎 (岡山大学学術研究院 環境生命自然科学学域)
近年,人口知能(AI)を利用した研究・開発を行う環境が整いつつある.AIの利用については正確性が求められる用途では原理的に難しいが,多少の誤りを許容できるのであれば利用範囲が広い優れた技術であると考えられる.特に画像認識や画像判別のAIの利用は野菜園芸生産に関する研究の場面でも活用範囲が広がってきており,今後なくてはならない技術になると考えられる.そこで,近年,イチゴの受粉のために利用されることが増えてきているポリネータであるヒロズキンバエの訪花頻度を測定するソフトウェアの開発を行った.開発したソフトウェアは,画像認識AIであるYOLOv4と画像判別AIであるVGG16を組み合わせたものである.イチゴの花をビデオカメラで一定時間撮影し,撮影したビデオを開発したソフトウェアで解析する方式である.ソフトウェアはビデオから一定の間隔で画像をjpeg形式で保存し,画像認識AIによって切り取った画像の中のイチゴの花の画像を切り出す.切り出した画像にヒロズキンバエが訪花しているかを画像判別AIを利用して判断する.このようにして訪花しているかを判断した結果をhtml形式およびcsv形式のファイルとして保存することができる.目視で訪問時間を確認したものと比べてもAIを利用したソフトウェアを使った場合に比べて大きな違いはなく,ビデオがあれば簡単にヒロズキンバエの訪花時間を判断できると考えられた.本ソフトウェアはAIでよく利用されるマイコンボードであるJetsonNano(Nvidia社製)上でも動作させることが可能で,目視で動作させる場合,約10%程度の時間で訪花時間を判断することが可能であった.本研究はJSPS科研費 JP23K05208の助成を受けたものです。