「超大型望遠鏡による高分散分光観測 」 青木和光(国立天文台TMTプロジェクト)
高分散分光観測は、系外惑星、恒星、星間物質、銀河間物質などを対象に幅広く用いられる。集光力が求められるため、次世代の地上大型望遠鏡が大きな役割を果たすと期待されている。系外惑星と恒星、銀河の化学進化を中心に主な観測対象と期待される成果を紹介する。
「巨大ブラックホール近傍の星の起源の研究」 西山正吾(宮城教育大学 )
強い潮汐力のため、巨大ブラックホール(MBH)近傍での星形成は難しい。MBH近傍の星の起源を探るため、MBH近傍の星の分光観測を行なった。球状星団、もしくは矮小銀河が起源だと示唆する結果が得られた。
「狭帯域測光によって発見された金属欠乏星候補天体の分光追観測」 岡田寛子(甲南大学 )
金属欠乏星は宇宙初期に誕生した星で、宇宙の化学進化を理解する上で重要な天体である。我々は狭帯域測光で発見された金属欠乏星候補天体の分光追観測を行い金属量を測定した。本講演ではその結果を紹介する。
「天文学観測および宇宙探査用の新しい透過型回折格子 」 海老塚 昇(理化学研究所 )
すばる望遠鏡MOIRCS用の新しいKバンド・グリズムやTMT用のTrapezoid gratingおよび月極域探査計画(LUPEX)のALIS用のVB grating等の開発状況について報告する。
「Seimei KOOLS-IFU Mapping of the Gas and Dust Distributions in Galactic Planetary Nebulae: the Case of IC2165」 大塚雅昭(京大岡山天文台 )
惑星状星雲IC2165のガスとダスト成分の物理的・化学的性質を、FWHM=1.3角度秒を有する二次元輝線マップを用いて調査した。三次元分光観測により得られた惑星状星雲におけるガス・ダスト成分の空間分布調査が、星周/星間物質の理解にいかに役立つのか、岡山といえども、工夫を凝らした観測と細部まで気を配った解析を行えば、ESO VLTなどの成果と十分に戦えることを実証する。
「若いK型星LQ Hyaのスーパーフレアの測光・分光同時観測」 前原裕之(国立天文台 )
せいめい望遠鏡と188cm望遠鏡を用いた若いK型星LQ Hyaの連続分光観測を、TESSによってこの星の観測が行われる2021年2-3月に行った。可視連続光の放射エネルギーが10^35 ergに達するスーパーフレアの観測に成功したのでその結果を報告する。
「若い太陽型星における活動性と黒点による光度変化」 山下真依(兵庫県立大学)
前主系列星や零歳主系列星は強い磁場を持ち、巨大な黒点や明るい彩層輝線が生じると考えられている。本講演ではすばる望遠鏡などにより得られた近赤外Ca II 三重輝線の強度と、TESSデータより推定した黒点占有率を合わせ、前主系列星および零歳主系列星のダイナモ活動について考察する。
「不規則に変光するYSO候補天体の分光観測」 八木 恵(兵庫県立大学)
銀河面の星形成領域外において赤外超過と不規則変光が見られる53天体を、西はりま天文台なゆた望遠鏡の可視光中低分散分光器MALLSを用いて分光観測を行い、新たにYSOを同定した。
「OISTER・せいめい・かなたによるスーパーチャンドラセカール超新星候補SN 2021znyの観測」 山中雅之(京都大学 )
我々は光赤外線天文学大学間連携(OISTER)・せいめい・かなた望遠鏡を用いてスーパーチャンドラセカール超新星候補 SN 2021zny を可視・近赤外線波長域で測光・分光観測を実施している。本講演ではその初期観測結果について報告する。
「静止衛星のスペクトルと時間変化」 藤原智子(日本スペースガード協会 )
我々は人工衛星の光学観測を通して、物理的特性がライトカーブやスペクトルにどのように反映されるか調べている。本講演では4つの静止衛星を対象に実施した観測結果とその時間変化について報告する。
「岡山クーデ分光乾板デジタルアーカイブの予備調査」 柳澤顕史(国立天文台 )
旧岡山観測所クーデ分光乾板1万枚のデジタルアーカイブを検討している。乾板からの復元スペクトルとCCDスペクトルを比較したところ違いは2-4%であった。強度スケール一次元スペクトルの公開も考えている。
「自作分光器による太陽観測(Ⅴ)~CaIIKによるC3.9フレアの観測と解析~」 坂江隆志(川口市立高等学校 )
2021年10月30日03:17(UT)に起きたC3.9太陽フレアを自作高分散分光器によるCaIIK線でとらえることに成功した。そのスペクトルを解析したところ、赤方偏移した非対称プロファイルが得られた。その結果について報告する。
「中小口径望遠鏡向け接眼分光器」 橋本 修(ぐんま天文台 )
天体の直接像と分光像を比較して観察できる接眼分光器を教育を主目的に開発してきた。これまでは1.5m級の望遠鏡を対象としてきたが、口径50cmから1m程度の望遠鏡に適したより小型で安価な装置を試作した。
「外国語学部での簡易分光器を用いたスペクトル学習」 福江 慧(滋賀医科大学 )
2019年度から外国語学部において、文系の学部生を念頭に基礎的な天文実習による学習を取り入れている。今回は特に簡易分光器の作成やそれを用いたスペクトルの学習について紹介する。
「HIDES-FとGAOES-RVによる系外惑星探索」 佐藤文衛(東京工業大学 )
「弱ヘリウム星3Cen A のUVスペクトル解析」 定金晃三((元)大阪教育大学 )
弱ヘリウム星3Cen A(HD 120709)のHSTで観測されたUVスペクトルを比較星ιHerを基準として比較解析を行った。3 Cen Aの化学組成の新しい特徴がいくつか明らかになった。
「95 Leo の大気速度場について」 西村昌能(京都産業大学 )
95 Leo(A3V,SB2)の主星にみられる様々な元素の吸収線に等価幅に対する線幅の依存性がみられる。線ごとにマクロ乱流速度を求めると元素種に関わらず浅い線ほど、大きな乱流速度を示すことがわかった。