クラスメイト、あの子たち皆同じ格好してる。
そのアイラインとか髪の巻き方とかさ、めちゃ可愛いんだけどでもなんか、古いっていうか。私もやってたけど、でもそれ2シーズン前くらいの話ね。
中野ゆきは兎に角「流行」に乗りたくない。「流行」という大波から逃げ続けたい。特に、理由はないのだけれど。
ただ「流行を追いかけることがトレンドセンス」だと思ってるミーハーと一緒にされたくないってだけ。
寂れた町を散策するのが好き。SNSは嫌い。あそこでは「いいね」にばかり価値がある。その手垢が付けば付くほど押し上げられてくシステムが、古い情報ばかりを蔓延させている。私は誰も使ってない音が聴きたい。今まで組み合わせられなかった色を混ぜたい。
ある日の放課後、乗ったことない路線の知らない駅で降りた。生ぬるい斜陽が滞る静かな商店街を抜けた先に、随分と古そうな廃墟を見つけた。新しいものの予感がする。彼女はその虚しい姿に惹かれて足を踏み込んだ。崩壊した壁や天井、腐った戸棚やテーブルが、迷路のように入り組んでいる。誰も寄せ付けまいとする暗闇が、あまのじゃくな彼女を奥へ奥へと誘い込む。どす黒く汚れた合板のドアを押し開ける。するとその時、突然白い光が網膜を突いた。目蓋に青と紫の痣が、強くしみる。現実と意識のタイムラグの修繕に少し手間取られながらも、覆っていた両手から、恐る恐る顔を上げる。懐中電灯の光源が真っ直ぐにこちらを向いていた。誰かいる。目が少しずつ慣れてきた。もう一人いる。視界が徐々に広くなる。4人いる。6人いる。パッと見では数えられない人数いる。
皆、女子高生だ。
皆、中野ゆきと全くそっくりな格好だった。
作者に与えられたお題は「古い話」でした。
”中野ゆき”とは、どんな人物でしょうか。我々は彼女のことを完全な他人だと思えるのでしょうか。というのも、私(初代会長)の中にも”中野ゆき”はいると思います。自分の個性を追い求めるために、他人とは違うことをする。しかし、その違いはやがて新しい普通に変わってしまう。
個性はなんだろう。この話は我々の中にいる”中野ゆき”に問いかけているのだと思います。
であれば、我々もその問いに答えるべきなのでしょう。
(2026/03 初代会長記)