現在取り組んでいる主な研究テーマ
内温性を持つアオザメの体温調節能力の解明
:アオザメに行動記録計を装着し、深い潜水中の体温変化を調べたところ、並外れた体温調節能力を持つことがわかりました。詳しくはプレスリリースをご覧ください。論文は誰でも閲覧できます(リンクはこちら)。
Tokunaga S, Chiang W-C, Nakamura I, Matsumoto R, Watanabe Y. Y (2025) Enhanced thermoregulation abilities of shortfin mako sharks as the key adaptive significance of regional endothermy in fishes. Journal of Animal Ecology, 94, 2178–2189. https://doi.org/10.1111/1365-2656.70116
内温性魚類における高速巡航遊泳の運動学的メカニズムの解明
:魚類の中には、体温を水温よりも高く保つ「内温性」という性質を持った種が存在します。ホホジロザメやアオザメ、マグロ類などがこれにあたります。このような内温性を持つ魚は、他の魚に比べて、平均的な遊泳速度が速いことがわかっています。この高速遊泳のメカニズムを明らかにするために、共同研究者から様々な魚類の行動データを提供していただき、種間比較解析をおこなっています。
野生下におけるサメ類の心拍計測手法の確立
:人間の場合、心拍数を測ることは比較的簡単です。しかし、海の中を自由に泳ぎ回るサメの場合、心拍数を測るのは容易ではありません。そこで我々は、心電図計をサメに取り付けて遊泳中のデータを記録し、後ほど心電図計を回収するという方法で、野生のサメの心拍数を計測しようと試みています。
これまでの研究テーマ
アデリーペンギンの追跡戦術とボウズハゲギスの防衛戦術
:南極のアデリーペンギンに取り付けられたビデオカメラの映像を解析し、① アデリーペンギンは逃げる魚との衝突位置を先読みするような形で追跡している、② 餌となる南極の魚(ボウズハゲギス)は、ペンギンに捕まった際、体を丸めることで飲み込まれにくくしている、という2つの新しい仮説を提示しました。
Tokunaga S, Kawabata Y, Takahashi A (2023) Penguin-mounted video camera provides new insights into predator–prey interactions with prey fish. Ecology, e3992. https://doi.org/10.1002/ecy.3992
サメ・エイ類の妊娠期間の長さに影響を与える要因
:サメ・エイ類の中には胎生の種が数多く存在しますが、その妊娠期間は数か月から数年まで種によって大きく異なります。このような種間差をもたらす要因を明らかにするため、36種のサメ・エイ類について、妊娠期間、体重、体温(水温)、一度に産む子の数のデータを文献から集め、種間比較解析を行いました。その結果、体重が大きな種ほど妊娠期間が長くなる傾向がありました。これは、体重が大きな種ほど体重1kgあたりの代謝速度が低くなるという、生物における一般法則によるものだと考えられました。また、暖かい海に生息する種や一度にたくさんの子を産む種は妊娠期間が短い傾向にあり、これらの結果も代謝速度の枠組みで説明することができました。本研究により、サメ・エイ類の妊娠期間は代謝速度によって決まる可能性が示唆されました。しかし、代謝速度を直接測定したわけではないため、今後さらなる研究が必要です。
Tokunaga S, Watanabe Y. Y, Kawano M, Kawabata Y (2022) Factors affecting gestation periods in elasmobranch fishes. Biology Open, 11(6), bio059270. https://doi.org/10.1242/bio.059270
魚類における性転換に要する時間を決める要因
:魚類の中には性転換をする種が数多く知られています。その「性転換に要する時間」に注目してみると、数日で性転換を完了する種もいれば、数十日を要する種もいます。このような種間差をもたらす要因を明らかにするため、体サイズと生殖腺のタイプについての文献データを集め、解析を行いました。その結果、どちらの要因も性転換に要する時間に影響を与えている可能性があり、それぞれの影響を切り分けることが難しいことがわかりました。これは、我々のデータセットでは、体の小さな種と大きな種がそれぞれ別のタイプの生殖腺を持っていたことに起因します。さらに詳細な解析を行うためには、より幅広い種で実験を行い、性転換に関するデータを集める必要があります。上記の内容を、新しい研究アイデアを提案する「Idea Paper」という形で発表しました。
Tokunaga S, Kadota T, Watanabe Y. Y, Kuwamura T, Kawabata Y (2022). Idea Paper: Effects of gonad type and body mass on the time required for sex change in fishes. Ecological Research, 1–5. https://doi.org/10.1111/1440-1703.12305