再電離期の銀河観測を用いた原始揺らぎの制限について

講演者:箕田 鉄兵

CMBの温度揺らぎや宇宙の大規模構造の起源として、原始曲率ゆらぎの存在が予見される。近年の観測によって、原始曲率揺らぎの振幅は波数スケールの単一冪に比例するモデルでよく説明できることがわかってきた。一方で、CMBや大規模構造の観測は1-100Mpc程度のスケールに限定されるため、原始揺らぎのスケール依存性をより詳細に調べるためには、異なるスケールに感度がある観測量を用いた調査が必要である。そこで本研究では約1Mpc以下の小スケールの揺らぎについて焦点を当てる。このような小スケールの原始曲率揺らぎは、初代星や初代銀河などの宇宙再電離期の天体の形成過程と密接に結びついているため、我々は原始曲率揺らぎのスケール依存性の違いが宇宙再電離過程に与える影響を数値計算コード21cmFASTを用いて調べた。また、現在までに宇宙再電離に関して得られている観測データとして、本研究ではPlanck衛星のCMBの光学的厚み、およびすばる望遠鏡によるライマンα輝線銀河の観測データと上記の計算結果を比較することで、原始曲率揺らぎへの制限を行った。本発表ではこの結果を報告する。