野生マンドリルにおけるメスの繁殖季節性とオスの流入

Hongo S. et al. (2016) International Journal of Primatology

要旨の日本語訳

集団中のオスの数を決定する要因は、霊長類学において長年研究されている問題である。わたしたちは、ガボン共和国のムカラバ‐ドゥドゥ国立公園での25か月間に及ぶカメラトラップ調査(カメラ設置場所160か所)によって、野生マンドリル(Mandrillus sphinx)のメスの繁殖季節性と群れ内のオスの数を調査した。調査によって得られた1,760ファイルの動画をもとに、新生児を抱いたメスや性皮腫脹をしたメスの数の変化など集団構成、集団にいるオス、そしてオスの集団での空間的位置取りについて分析した。

メスの繁殖は季節的であり、新生児の数は雨季の中頃に、性皮腫脹したメスの数は乾季の初め頃にピークを迎えた。群れにいるオスの数は乾季に増えたが、成獣オスの数(7倍)は亜成獣オスの数(2倍)よりもはるかに大きく増加した。成獣オス数のピークは性皮腫脹メス数のピークに比べ有意に遅れていた一方で、亜成獣オス数のピークは遅れていなかった。これは、亜成獣オスが成獣オスの流入に先駆けて群れに入っているか、あるいは、成獣オスが性皮腫脹メス数のピーク後も長く集団内に滞在し続けているかのどちらか(あるいはその両方)であることを示唆する。集団の中で、成獣オスは性皮腫脹メスの近くでよく撮影されていたが、亜成獣オスではそのような傾向はみられなかった。

私たちは本研究によって、受胎可能なメスの数とオスの数との明らかな関連を見つけ、オスの競争力が彼らの交尾戦略に影響しているという証拠を発見した。

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