喚起的映像とは、フィールドワークで撮影された複数の映像を並び替えることで、それらの映像どうしの潜在的な関係を引き出し、その映像に固有なフィールドについての理解を喚起することを目指す映像です。それは一見、取るに足らない出来事やありふれた風景を収めたような映像を、乱雑に並べられたものに過ぎません。しかし、映像に写っているものやその雰囲気、他の映像との関係を丁寧に辿っていけば、それぞれの映像を見ているだけでは明らかにならない仕方でフィールドがわかるはずです。
そして私たちは、人類学的なフィールドワークもきっと、フィールドで出会う無数のイメージを結びつけ、そこからのみ可能な思考を生み出すことだと考えています。
そのため私たちは、そうした映像の制作に取り組むとともに、人類学的な思考法の学習の方法として映像編集ワークショップを行なっています。これは「喚起的組み写真」と対になるプロジェクトとして進められています。
1. 映像を選ぶ
フィールドワークを通して撮影された映像をぼんやり見て、「気になるもの」を選んでいきます。一見よくわからないものや取るに足らない出来事を写した写真も、よいと思ったならば選び出します。
2. 映像をだいたい並べる
気に入った映像を映像編集ソフトで「直感的」に並びかえていきます。すなわち、「映像を通してこれが言いたい!」という目算や、「あれは宗教、これは芸能」といった人類学で普通に使われるカテゴリーをできるかぎり持たないようにします。むしろ、映像から受けとる印象や感覚をもとに、連続してほしい映像や、始まりや終わりにあってほしい映像などを決めていきます。
3. 映像を並べてしまった理由を考え、並び直す
映像を並べ終えたら、自分が並べた映像がどのようなグループを作っているか、グループどうしがどんなふうに結びついているか、といったことを考え、まとまりや関係に名前をつけます。 いったん自分が何を考えて映像を配置していたのかがわかったら、それをより適切に伝えられるように、映像を並び替えます。
4. 他の人の見え方を反映する
編集された映像を見せながら、その意図を他の人に説明してみます。そうすると、映像がどんなふうに見えるか、どうすれば意図がよりよく伝わるかが明らかになっていきます。それにあわせて映像の順番を入れ替えたり、説明を考え直したりします。
津田啓仁 2021 『Second Life in Peru』撮影:藤田周 https://youtu.be/kYiePpIqRTs?si=XrVBcebZxpVJpAo9
長谷川莉帆 2023 『自然と人の力学』撮影:橋爪太作 https://vimeo.com/952835839
井手あぐり 2024『なびくものたち』撮影:藤田周 https://youtu.be/VQmRKoY76Ac?si=iW9U9Bg0MTZxlyAh
康陽球 2024『音とともに向かう』撮影:康陽球 https://youtu.be/aUXWYMPnZW8?si=VAx13lKf9L8TazSv
指田光 2024『向かいゆくもの』撮影:橋爪太作 https://vimeo.com/994776374
藤田周 2023『みんなで踊る』撮影:橋爪太作 https://youtu.be/jvkW7ilhSfo?si=sgf98AdrWOLqEb_z
橋爪太作 2024『土地と向き合う人々』撮影:橋爪太作 https://youtu.be/KCwpU4jeoIg?si=ltnI0tJRtwsYPeTa
藤田周 2024『種を蒔く、水をあげる』撮影:康陽球 https://youtu.be/agj-Ij3lSng?si=lxZ8QBXrtn-fs9pM
2024.12 「人類学的思考の拡張のための映像編集ワークショップ2025」TUFiSCoワークショップ、於・東京外国語大学 (ゲスト講師 津田啓仁)
2024.4 「映像編集を通してフィールドワークを学ぼうーーベトナム編2024」TUFiSCoワークショップ、於・東京外国語大学(ゲスト講師 康陽球)
2024.3 「映像編集を通してフィールドワークを学ぼう@メルカリ・メルペイ人類学部」メルカリ・メルペイ人類学部、於・メルカリ東京オフィス
2024.2 「映像編集を通してフィールドワークを学ぼうーーペルー編2024」TUFiSCoワークショップ、於・東京外国語大学(ゲスト講師 イリナ・グリゴレ)
2023.11 「人類学的思考の拡張のための映像編集ワークショップ」TUFiSCoワークショップ、於・東京外国語大学 (ゲスト講師 津田啓仁)
2023.7 「映像編集を通してフィールドワークを学ぼう——メラネシア編」TUFiSCoワークショップ、於・東京外国語大学 配布資料 参加者が制作した映像作品集 (ゲスト講師 橋爪太作)
2023.6 (映像配信・口頭発表、津田啓仁・橋爪太作との共同発表)「開かれた民族誌映像制作のために——映像的思考法ワークショップの方法と意義 」、日本文化人類学会第57回研究大会、於・県立広島大学 配布資料
2023.2 「ワークショップ『映像編集を通してフィールドワークを学ぼう』の方法と反省」、コモンズカフェ、於・東京外国語大学 配布資料
2023.2 「映像編集を通してフィールドワークを学ぼう」TUFiSCoワークショップ、於・東京外国語大学 参加者が制作した映像作品集
2022.6 (映像上映、津田啓仁との共同発表)「Second Life in Peru/通り過ぎないもの 」、日本文化人類学会第56回研究大会、於・明治大学 配布資料(「映像で考える」ワークショップの概要とその意義について)