惑星は、恒星が生まれた直後に周囲に形成される原始惑星系円盤の中で作られます。円盤中のガスは数百万から一千万年程度で散逸するため、惑星形成が進行できる期間は天文学的に見ても極めて短いものです。一方で、現在観測されている系外惑星系の多くは、その形成からすでに十億〜百億年を経た状態にあります。したがって、私たちが目にしている惑星分布は、形成直後の初期条件だけでなく、その後に働いた長期的な力学的・散逸的過程の結果を反映しています(図1)。
この時間スケールの非対称性が、系外惑星研究の本質的な難しさです。観測で直接アクセスできるのは、形成からはるかに時間が経った「現在のスナップショット」だけであり、そこから逆に、形成後にどのような物理過程がどの時間スケールで働いたのかを読み解く必要があります。そのため、惑星系を理解するうえで重要なのは、単に「どのタイプの惑星がどれだけ存在するか」ではなく、惑星人口(出現率や軌道分布)が恒星の年齢とともにどのように変化していくかを調べることになります。年齢という“時間の軸”を導入することで、形成理論だけでは捉えきれない長期進化の物理を、観測データから検証できるようになります。
私はこの問題に対して、観測データに内在するさまざまな偏りや年齢推定の不確実性を正面から扱いながら、惑星分布の年齢依存性を統計的に推定する研究を進めています。
この問題の核心は、恒星の年齢が直接測れる量ではないという点にあります。とくに太陽型の主系列星は進化が非常に緩やかで、光度や有効温度といった基本的な観測量が数十億年にわたってほとんど変化しません(図2)。そのため、観測値から年齢を逆算することは本質的に不安定で、大きな不確実性を伴います。
さらに重要なのは、この不確実性が単なる測定誤差ではなく、恒星の質量、金属量、回転、活動性といった物理量と強く縮退した形で現れることです。たとえば、年齢が違っても似たスペクトルを示す星は多数存在します。一方で、惑星の検出効率や、実際に観測される恒星サンプルの性質も、これらの物理量に依存して系統的に変化します。したがって、年齢に対する惑星分布の変化を議論する際には、「本当に惑星人口が時間とともに変化したのか」と、「観測のバイアスの影響なのか」を厳密に切り分ける必要があります。
私の研究では、これらの要素をあらかじめモデルの中に組み込み、恒星と惑星の母集団を一貫した枠組みで扱うことで、惑星人口の年齢依存性を定量化しています。このアプローチにより、個々の星や惑星の不確実性を適切に考慮しながら、集団としての時間発展を観測から制約することが可能になります。
この枠組みを用いて、太陽型星を回るホットジュピターの出現率が年齢とともにどのように変化するかを解析しました。その結果、ホットジュピターの出現率が十億年スケールで有意に減少する傾向を示すことが明らかになりました(図3)。
この結果は、「若い星と古い星で数が違う」といった単純な比較から得られたものではありません。年齢推定の不確実性や観測の選択効果を同時に扱ったうえで、母集団としての時間変化を統計的に引き出したものです。これにより、潮汐散逸や力学的不安定性によってホットジュピターが長い時間の中で失われていくという潮汐破壊シナリオに対して、観測から具体的な時間スケールの制約を与えることが可能になりました。
年齢依存性の解析は、ホットジュピターに限らず、惑星半径・質量・軌道分布といった他の軸にも拡張することができます。これにより、惑星系が時間とともにどのように再編成されていくのかを、より包括的に捉えることが可能になります。将来の大規模サーベイと組み合わせることで、「時間発展する惑星人口」を観測的に再構成し、太陽系がその中でどの程度典型的な存在なのかを定量的に評価することを目指しています。
図1:惑星形成と進化のタイムスケール(概念図)
惑星は原始惑星系円盤の寿命(数百万〜一千万年)という短い期間に形成される一方、私たちが観測する惑星系の大半は形成から十億年以上を経ている。
図2:主系列星の年齢推定が難しい理由(credit: ESA)
太陽型星は数十億年にわたり主系列に留まり、光度や有効温度などの観測量が大きく変化しない。そのため、観測量から年齢を推定するのは本質的に難しく、さらに年齢不確実性は質量・金属量などと相関しやすいという問題もある。参考論文
Miyazaki & Masuda (2023), 「Evidence that the Occurrence Rate of Hot Jupiters around Sun-like Stars Decreases with Stellar Age」, Accepted for publication in the Astronomical Journal
https://ui.adsabs.harvard.edu/abs/2023AJ....166..209M/abstract
DOI: 10.3847/1538-3881/acff71