私の研究テーマは、「生命は宇宙にどれほど普遍的に存在するのか」という根源的な問いに、太陽系外惑星の観測から迫ることです。地球のような環境を持つ惑星がどれほど存在するのか、そして、そのような惑星がどのように形成され、時間とともにどのように進化してきたのかを、観測データに基づいて定量的に明らかにすることを目指しています。そのためには、個々の惑星系の特異な性質と惑星集団全体の統計的性質をそれぞれ捉え、その背後にある物理過程と結びつけて理解することが重要だと考えています。
具体的には、以下の三つを軸として、系外惑星人口統計とその物理的解釈に取り組んでいます。
太陽系外惑星人口統計とその恒星・惑星物理量依存性の解明
惑星系における主星の年齢・質量・金属量などの物理量と、惑星の存在頻度・軌道分布・サイズ分布との関係を、観測データに基づいて定量的に推定しています。惑星形成直後の状態だけでなく、形成後に起こる軌道進化や散逸、潮汐進化、力学的不安定といった長期的な進化過程が、現在観測される惑星集団にどのように反映されているかに関心があります。例えば、ホットジュピターの出現率が恒星年齢とともにどのように変化するかといった問題に取り組み、惑星系が時間とともにどのように変化するのかを明らかにしようとしています。
参考論文:Miyazaki & Masuda (2023)
重力マイクロレンズで探る冷たい惑星・浮遊惑星の探査
現在よく知られている系外惑星の多くは、トランジット法や視線速度法によって発見された、主星に比較的近い軌道を持つ惑星です。一方で、太陽系の木星や土星のような主星から遠く離れた冷たい惑星や、主星を持たない浮遊惑星、惑星と恒星の中間的な性質を持つ褐色矮星の分布は、いまだ十分には分かっていません。私は、重力マイクロレンズ法を用いて、このような低温・遠方・低光度の天体を探査しています。マイクロレンズ法は、レンズ天体の重力によって背景星の光が一時的に増光する現象を利用するため、天体自身の明るさに依らず、他の手法では捉えにくい領域に感度を持つという大きな利点があります。特に、水が凍結する境界である雪線より外側の惑星や、銀河系内の広い距離分布を持つ惑星系を調べられる点に特徴があります。重力マイクロレンズの精密解析を積み重ねることで、冷たい惑星・褐色矮星・浮遊惑星の人口統計を構築し、太陽系外惑星全体の分布像をより完全なものにすることを目指しています。
参考論文:Miyazaki et al. (2018), (2020), (2021), (2022)
データ科学に立脚した解析基盤の構築
近年の天文学では、大規模サーベイや高精度観測によって得られるデータ量・複雑さが急速に増しており、従来の経験的あるいは逐次的な解析だけでは、観測データに含まれる情報を十分に引き出せなくなりつつあります。特に、微弱なシグナル、高次効果を含む複雑なモデル、多数の天体を一度に扱う統計解析では、計算手法そのものが研究の到達点を決める重要な要素になります。私は、GPU並列計算、自動微分、ベイズ推定といったデータ科学の基盤技術を取り入れ、観測データをより直接的かつ柔軟に解釈するための解析基盤を開発しています。これにより、複雑な高次効果を含む場合でも、モデルの一貫性を保ったままパラメータ推定や不定性評価を行うことが可能になります。今後は、こうした解析基盤をマイクロレンズに限らず、より広い系外惑星観測データへ展開し、個別天体の理解と惑星集団全体の理解を一つの枠組みの中で結びつけることを目指しています。
参考論文:Miyazaki & Kawahara (2025)
今後は、地上望遠鏡に加えて Nancy Grace Roman Space Telescope などから得られる多様な観測データを総合的に解析し、惑星系の形成頻度・構造・時間進化をより高い精度で定量化していきたいと考えています。こうした研究を通じて、太陽系や地球が宇宙の中でどの程度典型的なのか、あるいは特異な存在なのかを、天文学的観点から明らかにすることを目指しています。
最近は、こうした人口統計的理解と並行して、系外惑星大気の特徴づけにも関心を広げています。
太陽系外惑星の分布図(発見手法毎に色分けされている)。縦軸が惑星質量(地球質量単位)、横軸が軌道長半径(天文単位)を示しており、太陽系内の惑星の位置も写真で図示されている。これまでに5000個以上の系外惑星が発見されてきたが、その大半が主星に近い「熱い惑星」である。我々の太陽系に属しているような惑星の分布は未だによくわかっておらず、太陽系やとりわけ地球のような惑星の普遍性は未解明のままである。
銀河系内で発見された系外惑星の分布図(発見手法別に色分け)。左側のおおよそ太陽系近傍では、視線速度法(緑)やトランジット法(黄)による検出が多く集中している。これに対し、マイクロレンズ法で発見された惑星系(赤)は銀河中心方向に幅広く分布しており、遠方の惑星系まで探査できるため、銀河系全体における惑星の存在頻度を調べるうえで有効な手法である。