研究テーマ

Image credit:NASA/JPL-Caltech

ガンマ線を放射する活動銀河核ジェット天体の研究

我々の住む地球が属する太陽系を含む天の川銀河の中心には、太陽の数百万倍以上の重さを持つ超巨大ブラックホールが潜むと考えられています。同じように、宇宙に存在する無数の銀河の中心にも、超巨大ブラックホールが潜むと考えられています。ブラックホールはその強い重力で周辺物質を吸い込むだけでなく、光速に近い速さで、細く絞られた物質の流れを生み出すと考えられており、実際に”ジェット”としてあらゆる波長で観測されています。しかし、そのジェットが、どのように生成され、どのように光速近くまで加速され、どのように細く絞られた流れを形成するのかは、まだよくわかっていません。また、ジェットは、超高エネルギーガンマ線の放射とも関わっているとされており、どこでどのようにそのような放射が生まれるのかも、大きな謎として残っています。

超長基線電波干渉計(VLBI)は、最も高解像度で天体現象を捉えることができます。私は、主にVLBIを用いてジェットを超高解像度で撮像し、ブラックホールに近いところから、ジェット先端の吹き溜まり(ホットスポット)まで、詳細に解析し、その原理を探っています。また、特にガンマ線を放射する天体を多く調査し、ジェットの放射との関連性を探っています。

Image credit: Event Horizon Telescope Collaboration

EHTは、ミリ波で仮想的に地球サイズの大口径電波望遠鏡アレイを構築することで、人類史上初めてブラックホールの影を直接撮像することを目指しています。私はこの国際プロジェクトに参加し、観測提案から、グリーンランドでの観測・データ取得、データ解析、イメージング、科学的解釈までの一連の研究に携わっています。

我々から見て、視直径が最も大きいブラックホールは、天の川銀河の中心に存在するSgr A*(サジタリウス・エースター)と、おとめ座銀河の中心にある電波銀河中心核・M87とされています。この2つの天体はブラックホールの影の撮像を目指す主要天体です。また、EHTの超高解像度は、他のジェット天体の観測にも活かされようとしています。私は、Markarian 501(マルカリアン501)という高エネルギーガンマ線・天体でEHTを用いた観測を提案し、採択されています。

Image credit: Shoko Koyama

グリーンランド望遠鏡(GLT)プロジェクト

GLTは、デンマーク領・グリーンランドのチューレ米空軍基地に置かれた12メートルのミリ波・サブミリ波望遠鏡です。台湾・中央研究院と米・ハーバードスミソニアン研究所の共同プロジェクトです。望遠鏡は、アルマ(Atacama Large Millimeter/Submillimeter Array・ALMA)の試験用に作成されたものです。私は2017年からGLTの試運転に参加し、実際にハワイやグリーンランドでの試験観測を重ねました。2018年からGLTは、EHTとGrobal Millimeter VLBI Array (GMVA)の観測に参加しています。EHTに関しては、北天から観測できるM87の観測に力を注いでいます。グリーンランドは寒い時では体感温度がマイナス40度を下回るため、大気が非常に乾燥しているおかげで、ミリ波観測の妨げとなる水蒸気の影響が少なく、観測に最適な環境になっています。


2018年5月:GLTが台湾のメディアに取り上げられました!実際にグリーンランドで1週間の密着取材が行われました。同僚の方々が出演しています(中国語,~50分)。