信州自然誌科学館「信州サイエンスフェスタ2022」へようこそ
今年も信州自然誌科学館「信州サイエンスフェスタ2022」を企画しています.3年ぶりの開催となりますが,今年も様々なブース・パネル出展と,特別企画「科学のおはなし」,「自由研究何でも相談」,「自然科学館ツアー」を用意しています.短い時間ではありますが,ぜひ楽しんでいっていただければと思います.
みなさん,「サイエンス」と聞いて何を思い浮かべるでしょうか?学校で理科や算数の勉強をしていますね.本イベントに来ていただくみなさんは好奇心をもってそれらの勉強を楽しんでいると思います.サイエンスを理解していると,日々の生活が少し楽しくなります.また,多くのサイエンスの研究成果は社会に役立つものです.例えば,日々の天気予報もサイエンスをベースとしたサービスですし,天気図を見て気象状況が理解できることは実は楽しいことなのです.本イベントでの体験が少しでもみなさんの今後の人生を豊かにすること,みなさんの中から研究者をめざす人があらわれることを実行委員のひとりとして願っています.
私自身も小学生の頃から理科が好きでした.科学的な現象のしくみを理解できることが楽しかったことを覚えています.そのような経験が重なり研究者をめざすようになりました.現在,私は地表面近くの気象現象を研究しています.それをベースに大気と様々な地表面との間の温室効果ガス交換の解明にも取り組んでいます.気候変動に関連して温室効果ガスである二酸化炭素の大気濃度が上昇していることが注目されていますが,地球全体でこの交換量を予測するためにはまだまだわかっていないことが多いです.植物が光合成をして二酸化炭素を吸収することは小学校で学びますので,このことは意外に思えるかもしれません.ですが,植物がどれぐらいの量の二酸化炭素を吸収し,それが将来の気候下においてどのように変化するかを予測するためには生物学,物理学,数学などを用いた総合的な研究が必要です.そのような研究を世界の研究者と協力してすすめることは,やりがいのある仕事です.
そのような中,気候モデルを開発したアメリカのプリンストン大学の真鍋淑郎さんが昨年のノーベル物理学賞を受賞したことは私にとっても大きなニュースでした.これまでの物理学賞のほとんどは宇宙物理や原子スケールの物理などの純粋な物理学を対象としたものでしたが,気候変動という地球環境に関する研究に賞が与えられたことは,地球環境の研究をする我々研究者にとっても刺激になりましたし,これから地球環境を勉強しようとしている人にとっても励みになると思います.真鍋さんは受賞時に「好奇心ではじめた研究でした.本当におもしろい研究というのは,好奇心から出るのが大事です」とコメントしています.好奇心は人の原動力として重要であることがよく表されていると思います.
本イベントは過去2年間,新型コロナウィルス感染拡大防止のために開催ができませんでしたが,出展者は今年こそはと多くの時間をかけて準備をしてくれています.好奇心への刺激を楽しんでいってください.
信州自然誌科学館「信州サイエンスフェスタ2022」
実行委員会 委員長 岩田 拓記