LEE INSEOB (信州大学: M2)
LEE INSEOB (信州大学: M2)
物理定数の時間変動可能性と TMT 時代のサイエンス
物理法則は不変なのか。現代の科学が抱えている重要な疑問点の一つである。1900年代に入って物理法則、その中でも物理定数の時間変動可能性に対して様々な仮説が立てられたが観測による検証にはまだ至っていない。これは非常に精密な観測が要求されるのが原因とされており、今までの観測機器では限界があることが挙げられていた。しかしTMT(Thirty Meter Telescope)をはじめ2030年代には30メートル級望遠鏡による新しいサイエンスが開かれる。
微細構造定数(以下α)が変動すれば遷移波長も変わる。故に、αの時間変動の有無を直接調べる方法としてクェーサー吸収線の観測が効果的である。特に金属イオンの場合、遷移波長のずれの程度を表す「q-value」が特徴的で、q-valueの大きさだけでなく符号も異なるためこの研究に適合している。本研究ではα変動の観測において、過去にα変動が認められた吸収体の性質を調べ、TMT時代に求められる望遠鏡の性能評価およびこの観測に適しているターゲット天体の選定を行った。