前田 祐輔 (信州大学: M2)
前田 祐輔 (信州大学: M2)
BAL クェーサー周辺でみられる近接効果の異方性について
銀河間ガス (intergalactic medium; IGM) を、クェーサーのスペクトル上で検出すると、クェーサーの近傍では中性水素 (HI) ガスによる吸収線の強度と検出頻度が減少することが知られている。これはクェーサーの近傍では IGM の電離状態が高いことを示唆する (クェーサーの「近接効果」)。この効果の等方性を調べるために、離角の小さいペアクェーサーを探し出し、手前のクェーサーの接線方向にあるHIガスを、背後にあるクェーサーのスペクトル上で吸収線として捉えるという観測が行われた。その結果は、クェーサーの接線方向ではHI吸収が超過することが明らかになり、接線方向のIGMの電離状態が低いことが示唆された (Prochaska et al. 2013; Jalan, Chand, \& Srianand, 2019)。本研究では、ダストトーラスによる影響を確認する為に、降着円盤をedge-onに近い方向から観測したときに検出される広吸収線 ( broad absorption line; BAL ) をもつペアクェーサーを対象として、同様の解析を行った。先行研究 ( Misawa et al. 2022 ) で問題となった、クェーサーのサンプル数の少なさをペアクェーサー選定に対する条件を緩めることで約4倍に増やした結果、「近接効果」がダストトーラスによる紫外線放射の偏りで説明できる可能性が高いことが分かった。今後は今回の解析結果の統計的精度を更に向上させるために、追加解析を行う予定である。