コネクター

S. Seki, S. Yamamoto, A new proof of the duality of multiple zeta values and its generalizations, Int. J. of Number Theory, Vol. 15, No. 6 (2019), 1261–1265. 

で初めて明示的に導入した"connected sum"(トポロジーにおける同名の概念とは別概念である)に現れる因子。種々の級数間関係式を証明するのに有用な概念であると感じており、既に複数の関連する研究論文が発表されている(「参考文献」を参照してください)。

論文 "H. Kawamura, T. Maesaka, S. Seki, Multivariable connected sums and multiple polylogarithms, Res. Math. Sci. 9 (2022), 4." の紹介記事: PDFへのリンク

大野泰生先生が夢の中で発見されたという巡回和公式を証明する "変則的な級数" は、後から振り返ると、一種のconnected sumと思うことができ("connectors"のセクション7)、私は両端を繋ぐ因子のことを「大野のEurekaコネクター」と呼んでいる。発見の経緯が書かれた裳華房のコラム記事「Eureka!〜眠りの中で〜」は必読。

数体の素元星座定理

W. Kai, M. Mimura, A. Munemasa, S. Seki, K. Yoshino, Constellations in prime elements of number fields, preprint.

で証明した定理。曰く、任意の数体Kとその整数環Oについて、Oの素元のみで構成されるようなO内の任意の形状の星座が存在する。Kが有理数体である場合がグリーン・タオの定理に他ならない。

辻順平氏による一般向け解説:リンク

セメレディの定理

1975年、 Endre Szemerédi(アーベル賞受賞者)は以下の論文において非常に深い定理を証明した。

E. Szemerédi, On sets of integers containing no k elements in arithmetic progression, Acta Arith. 27 (1975), 299–345. 

この記念碑的論文の序文から少し引用したい。

セメレディの定理への出発点となるファン・デル・ヴェルデンの定理、セメレディの定理の先にあるグリーン・タオの定理の両方について言及されているのが興味深い。

グリーン・タオの定理の知られている証明においては擬ランダム測度の構成のために素数の性質が使われている。セメレディの "The hope" は今なお重要な課題である。

その他のノート

・『多重ゼータ値入門』:PDFへのリンク

・素数定理の初等証明の解説:noteへのリンク

好きな言葉

・「整数論とはなにか?    という問いに

人の心を熱くする数に潜む秩序と法則を追い求める学問

と, 私は答える. 」

斎藤秀司著, 『整数論』, 共立出版, 1997, 236ページ の「まえがき」より引用。


・"my true love was elementary number theory"  

C. Pomerance, Ruth-Aaron numbers revisited, Paul Erdős and his mathematics, I (Budapest, 1999), 567–579, Bolyai Soc. Math. Stud., 11, János Bolyai Math. Soc., Budapest, 2002. より引用


・「黙って目標達成するんが漢や。有言実行は二流やで」

増島拓哉著, 『闇夜の底で踊れ』, 集英社文庫, 2021. より引用。著者は私の母校である北野高校出身の小説家ということで興味を持って読みました。私は120期で増島氏は129期です。