Works - Selected
色と雲 – The Touch of Creation:
本作は※色と雲シリーズのひとつで、春画の手足とミケランジェロの『アダムの創造』の手足を組み合わせ、人類にとって手足の所作が世界を創るイメージを想起させるのではないかという仮説を探求している。
手足の所作は、祈りや儀式、踊りなど、文化や時代を超えて人間が行ってきた身体表現の普遍性を持つ。本作では、無作為に置いた色の両脇に『国芳の春画』と『アダムの創造』の資料を配置し、色や線、シミと共に眺めながら、自身の視覚的錯覚や思い込みによって見出された融合イメージを手掛かりに制作した。春画の絡み合う手足とミケランジェロの手足が交錯することで、人類共通の手足の動作に由来する原初的な「世界創造」のイメージが立ち現れる。
この融合を通して、春画で表現していた手足の絡み合いに西洋の手足を加え、創造や世界生成に関わる手足の普遍性を探る試みとなっている。
色と雲 #7 -The Touch of Creation
2025
255×136×3cm
キャンバスにアクリル、スプレー、木炭、オイルパステル
歌川国芳 「当世小紋帳」|2025
ミケランジェロ 「アダムの創造」|2025
※色と雲シリーズ:
春画の手足に着想を得た「色と雲」シリーズは、偶然置かれた色の中に人の気配を感じ、手や足という“関係(人や物事、現象を含むあらゆるつながりや作用)のメタファー”を見出していく過程そのものを作品とする。
人の視覚や想像に潜む思い込みや見間違いといったバイアスを表現技法として用い、作家自身の絵を描く手(ときに足)も関係のメタファーとなり、装置として機能する。無作為に置いた色や線の上に手足を重ねて描くことで、絡み合う手足が私たちが認知する世界の不確かさや絶えず変化する現実のイメージを絵画の中に形作っていく。
完成はあらかじめ定められず、描く過程で見つけ出されるイメージと作家自身が関係の一部として作品に取り込まれていくように世界を描く。その過程を通じて関係が世界を生み出すあり方を探る。
© KANEKO SHINICHI