Projects - Series
色と雲|Colors and Clouds
- 現在の視点/絵画 -
「色と雲」は、色・線・形の偶然性の中から、手や足という「関係」のイメージを見出していく絵画シリーズである。浮世絵春画に描かれた手足を手がかりに、世界を生成していく目に見えない「関係=Interconnectedness(相互関連性)」を可視化する試みである。画面上に無作為に置かれた色や線、形の中に、人の気配や身体の断片が立ち現れ、それらはやがて手や足として「見えてくる」。
そのとき私たちは、そこに本来存在しないはずの像を、視覚や記憶、想像によって補いながら見ている。その「見えてしまう」瞬間には、思い込みや見間違いといった、人間の知覚そのものに内在するバイアスが深く関与している。関係は世界を生成しながら絶えず変化し、私たちはその世界を、こうした知覚の働きを通して現実として受け取っている。
兼子は、このバイアスそのものを制作の技法として用いる。描く行為は、あらかじめ完成像を定めるのではなく、偶然に現れた要素(色・線・形)を手がかりに関係を読み取り、描き加え、応答していくプロセスとして進められる。そこでは、作家自身の判断や視点もまた、関係の一部として作品に組み込まれていく。
「色と雲」において重要なのは、完成された図像そのものではなく、世界が立ち上がっていく過程である。色と形の配置、見ること、描くことが相互に作用し、関係の網を編みながら拡大していく。その過程自体が、このシリーズにおける表現の中核を成している。
「色と雲」シリーズより部分。無作為に置かれた色・線・形の重なりの中に、「関係(Interconnectedness)」のメタファーとして春画の手足が見出される。
© KANEKO SHINICHI