藤井真栄のホームページへようこそ!
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クォークグルーオンプラズマ(QGP)とは?
世の中の全ての物質は原子からできており、原子は原子核と電子から成ります。さらに細かく見ると、原子核は陽子や中性子などの核子から成り、核子はクォークやグルーオンなどの素粒子によって構成されています。つまり、素粒子は物質の階層構造の一番下に位置する最も基本的な粒子です。原子にある一定のエネルギー(例えば温度)を与えると、電子と原子核に分離してプラズマが生成されます。雷や火はこのプラズマの一種です。このように、物質にエネルギーを与えることで物質の下の階層を覗き見ることができます。クォークグルーオンプラズマ(QGP)とは、物質の階層構造の一番下に位置するクォークやグルーオンなどの素粒子レベルでバラバラになった極限物質で、このQGPを再現するためにはおよそ2兆度の温度が必要だと言われています。我々の宇宙は138億年前にビッグバンと呼ばれる大爆発から始まりました。ビッグバン直後数マイクロ秒は宇宙全体の温度が2兆度よりも高く、宇宙はQGPで満たされていたと考えられています。つまり、QGPは現在宇宙に存在する物質の起源となるものです。急激な膨張に伴って宇宙全体の温度は冷えて行き、現在では-270度程度までになっています。そのおかげで物質の階層構造の一番上にいる私たちが安定して存在しています。
高エネルギー原子核衝突反応
実は、QGPはわずかな時間だけ地球上で創り出すことができます。欧州原子核研究機構(CERN)における大型ハドロン衝突型加速器(Large Hadron Collider, LHC)(図1)やブルックヘブン国立研究所(BNL)における相対論的重イオン衝突型加速器(Relativistic Heavy Ion Collider, RHIC)などの加速器を用いて、原子核を光速の99%以上まで加速し正面衝突させます。この時、瞬間的に超高温状態を実現することができ、一瞬だけQGPが実現できます。実際、LHCでの5兆度が人が創造した最高温度としてギネス記録に認定されています(Guinness World Records ホームページ )。この実験はQGPを人工的に生成する唯一の手段であり、初期宇宙を再現するという意味でビッグバンと対応させてリトルバンと呼ばれます。この実験によって生成されたQGPを現象論的に解析することによって、QGPの物性を理解しようとする試みが行われています。しかし、QGPの研究はそう簡単ではありません。生成されたQGPは検出器に向かうまでに冷えて粒子化してしまうので直接観測することができず、得られるデータは飛んできた粒子の種類、運動量などだけです。つまり、原子核衝突反応の複雑な反応過程(図2)を最初から最後まで記述する現象論的なモデルを構築し、間接的にQGPの研究をするしかありません。これまでの研究で、高エネルギー原子核衝突反応によって生成されたQGPは、粘性などがないサラサラとした完全流体的な振る舞いをすることがわかってきました(プレスリリース )。それに伴って、QGPの時空発展を記述する方法として相対論的流体力学が盛んに用いられるようになりました。この相対論的流体力学を用いてQGPの物性に迫るのが私の研究です。ただ、QGPだけの時空発展を記述できても意味がありません。先述の通り、高エネルギー原子核衝突反応は複雑な反応ステージが重なり合っていますので、衝突直後や粒子化後の時空発展なども記述する必要があります。それぞれの反応ステージごとに世界中の物理学者たちが様々なモデルを作り上げ、協力し合ってQGP物性の研究を進めています。このように、研究もスポーツと同じくチームプレイです。これはこの分野だけでの話ではありません。世界中の研究者が叡智を結集して一つの目標に向かって突き進んでいます。私も微力ながら、相対論的流体力学を通して分野の目標に貢献していきたいと思っています。ここまで読んで頂き、ありがとうございました。QGPについてもっと詳しく知りたい方は私の修士論文の第一章を、相対論的流体力学についてもっと詳しく知りたい方は第二章を読んでみてください。
図1 LHCの全景。フランスとスイスの国境をまたいでおり、全長はおよそ27kmにも及ぶ。山手線とほぼ同じ大きさ。(引用https://m.facebook.com/SwissEmbassyTokyo/photos/a.325475300928762/1510376835771930/?type=3)
図2 高エネルギー原子核衝突反応の時空発展図。横軸が衝突軸で縦軸が時間を表す。原点で原子核同士が衝突し、複雑な反応過程を経る。過渡的な状態としてQGPが生成される。
研究紹介
修士課程
現在のQGPの研究は精密化の段階にあります。興味が持たれているQGP物性としてずれ粘性や体粘性などの輸送係数が挙げられ、これらを実験結果から引き出す目的で、粘性の効果を含んだ相対論的粘性流体モデルによる研究が盛んに行われています。しかし、非平衡統計力学における金字塔である揺動散逸関係によると、有限の粘性がある場合はそれに付随して必ず流体揺らぎが存在します。つまり、温度などの熱力学量が時々刻々と揺らいでいます。例としてコップに入った水を考えてみます。十分に時間が経っていれば水は室温(例えば20度)になるはずです。しかし、この20度というのはあくまでマクロな視点から見た温度で、もっとミクロに見ると場所ごとに温度が19.95度、20.01度、20.2度...のように揺らいでいます。この影響は考えている系が小さくなるほど大きくなります。高エネルギー原子核衝突反応におけるQGPは、原子核程度のサイズしか持たない小さい系ですので、この流体揺らぎの効果を計算に取り入れることは精密化の段階において必須となります。私の研究では1次元膨張系において、この流体揺らぎまで取り入れた相対論的揺らぎ流体の枠組みを構築し、揺らぎがどのようなダイナミクスに従うのかを調べました。他にもこの研究の新しい点、モチベーション、結果など伝えたいことが山ほどありますが、ここには書ききれないので概要のみの説明とさせて頂きます。興味を持って頂けた方は、以下の修士論文や発表スライドなどもご覧ください。メールにての質問も大歓迎です。
資料はこちらをクリック
博士課程
クォークやグルーオンなどの素粒子のダイナミクスは量子色力学(Quantum Chromodynamics, QCD)によって記述されます。このQCDは素粒子・原子核・宇宙物理学の分野に跨って興味が持たれており、まさに現代物理学の最先端です。我々の大きな目標は、このQCDによって記述される物質の相図である「QCD相図」の全貌を明らかにすることです(図3)。例えば、私たちは水の性質をよく知っています。しかし、何をもって理解したと言えるのでしょうか。それはまさしく水の相図です。中学・高校で水の相図(何度で水蒸気になるのか、何度で氷になるのか、三重点はどこかなど)を習いますが、このQCD物質版を精密に描くことが分野の大きな目標になっています。特に、QCD相図のバリオン化学ポテンシャルが小さい領域(図3の左側)に関してはこれまでの研究でよくわかっていますが、バリオン化学ポテンシャルが大きい領域(図3の右側)はほとんど分かっていません。特に、相図上で最も興味が持たれている臨界点の位置すら分かっていないのが現状です。詳しいことはまだ書けませんが、私の博士課程の研究では、人類未到の相図の右側を探査することを目指しています。
図3 QCD相図の概略図(予想図)。低温・低密度領域ではハドロンが実現しており、高温・高密度領域ではQGPが実現している。
ポスター
近況報告
2025/09/16-19 広島大学で開催された日本物理学会第80回年次大会にて口頭発表を行いました。質問が多く出て盛況でした!
2025/05/1~2 国際会議Quark Matterの後に国内で開催される研究会「postQM 2025」にて流体・動的模型のreviewerとして招待講演を行いました。
2025/04/22 国際会議ATHIC2025のproceedingsをarXivに公開しました。
2025/04/6~13 ドイツのフランクフルトで開催された国際会議Quark Matter2025にてポスター発表を行いました。
2025/04/01 今年度が博士課程の最終学年です!気合い入れていきます!
2025/04/01 Sophia SPRING Projectのホームページに私のインタビュー記事(JP, EN)が掲載されました!
2025/03/27 博士論文中間発表を行いました。
2025/03/18~21 日本物理学会で口頭発表(オンライン)を行いました。
2025/2/27~3/1 長崎で開催されたGo-Forward研究会にて招待公演を行いました。発表は30分の予定でしたが、質問が多く出て1時間に及びました!
2025/1/13~16 インドのブラフマプールで開催された国際会議ATHIC2025にて口頭発表を行いました。物理でも文化でも多くの刺激を受けました!
2024/10/28~31 フランスのナントで開催された国際ワークショップHydrodynamics and related observables in heavy-ion collisionsで発表を行いました。自身の研究をhydrodynamicsの専門家等に存分にアピールできたと思います!もちろん食事や観光も楽しみました!
2024/10/03 新学期初めのグループミーティングがありました。それぞれのメンバーが夏休み中の進捗を発表しました!
2024/08/06 大阪大学・南部陽一郎ホールで開催された高エネルギー重イオン衝突の物理 チュートリアル研究会にてポスター発表を行いました!
2024/06/26 国際会議Quark Matter2023のproceedingがEPJ Web of Conference誌より出版されました!
2024/06/07 JST次世代研究者挑戦的研究プログラムにおける「Sophia SPRING Project」の選抜学生に選出されました!
2024/04/12 新卒研生・リサーチトライアル生の歓迎会を行いました。Enjoy Your Research!
2024/03/19 日本物理学会で口頭発表(オンライン)を行いました。自身の研究成果を十分にアピールできたと思います!
2024/03/07 私の論文の出版祝いを行って頂きました!引き続き新たな論文に向けて気合を入れていきます!
2024/02/27 自身初となる論文"Causal hydrodynamic fluctuations in a one-dimensional expanding system"がPhysical Review C誌より出版されました!
2024/02/02 今年度は卒業論文発表会、修士論文発表会、博士論文審査それぞれに研究室からの発表者がいましたが本日で全て終了しました。とても質の良いプレゼンばかりでとても良い刺激になりました!お疲れ様でした!
2024/01/31 卒研生の卒業研究発表会がありました。とても良く洗練されたプレゼンで、このI年間でものすごく成長できたと思います!
2024/01/01 あけましておめでとうございます。今年も今まで以上にバリバリ研究を進めていきたいと思います!
2023/12/21 研究室で卒研中間発表会を行い、その後忘年会を行いました。卒研生の皆さん、お疲れ様でした!
2023/12/11 上智大学通信第473号に受賞記事が載りました!
2023/11/17 有志で「山梨の新酒を楽しむ会」を行いました。非常に多くのことを学び、お気に入りも見つけることができました!
2023/11/08 国際会議Quark Matter2023のproceedingsをarXivに公開しました。
2023/10/18 「Causal hydrodynamic fluctuations in one-dimensional expanding system 」というタイトルの論文をarXivに公開しました。
2023/09/22 東京大学本郷キャンパスにて開催された第40回Heavy Ion Cafeにて招待講演を行いました。多くの有意義な質問をして頂き、私自身勉強になりました!
2023/09/03~10 テキサス州ヒューストンで開催される分野最大の国際会議Quark Matter 2023にてポスター発表を行いました。Outstanding Poster & Flash Talk Presentation Awardを受賞し最終日にflash talkを行いました。とても学びや刺激のある一週間でした!受賞記事が上智大学ホームページに載りました!
2023/08/22 9月に卒業する留学生のfarewell partyを行いました。一番の思い出はdebugらしいです笑。Good luck!
2023/08/02 オープンキャンパスラボツアーで高校生向けに講演を行いました。超高温物理学に興味を持って頂けたら幸いです!
2023/07/29 春学期終わりのパーティを研究室内で行いました。たくさんのゲストにも参加して頂き大盛況でした!
2023/04/23~27 広島での国際会議ATHIC2023に参加し、発表してきました。多くの人脈が築けたと思います。いい経験になりました!
2023/04/14 新卒研生歓迎会を行いました!Enjoy your research!
2023/03/28 学位授与式がありました。式後、指導教官がスパークリングワインを用意して下さり、研究室で歓談しました!
2023/03/27 J-PARCハドロン研究会にて30分の講演(オンライン)を行いました。質問が多く出て、大盛況でした!
2023/03/25 日本物理学会で口頭発表(オンライン)を行いました。「わかりやすかった」と言ってもらえました!プレゼンには力を入れているのでとても嬉しかったです!
2023/03/09 研究室メンバーで修士論文発表会と卒研発表の打ち上げを行いました。ジンギスカン美味しかったです!
2023/03/01 ホームページ公開。このホームページを通して物理の面白さを発信していきたいと思います!