第十一號

特集「 2002年10月


表紙の言葉


 一滴の水といえば、ビデオ作家のビル・ビオラの作品を思い出す。彼のは水滴の落ちる瞬間をカメラでクローズアップし、落ちる時をとらえる。落ちた水滴が、下においてある太鼓を打ち、音が響くという映像と音の作品。

 私はその時に感じたイメージを表紙に選んだ。この水滴の上に彼自身の顔が映った写真がある。よってこの絵は彼に捧げるものである。暑い夏にこの水の大切さを思う。



◇作品解説


ここで山口が言及しているのは、ビル・ヴィオラのビデオ・インスタレーション作品『彼はあなたのために涙を流す』(1976)です。この作品にインスパイアされて描いたのが表紙のドローイングだと説明しています。ヴィオラだけでなく、山口もまた「水」を素材とするビデオ作品を多く制作してきました。その理由として「水の姿そのものの変化が興味をかきたてるだけでなく、水の動体の複雑な変容が、エレクトロニクス・メディアの感受力に相応しい」*ことを挙げています。



*山口勝弘『メディア時代の天神祭』,美術出版社,1992年,pp.287-288