第十號

特集「茶」 2002年3月


◇編集後記


 『紫明』創刊以来、五年の歳月が流れました。今回第十號をお届けいたします。

 創刊號では、この欄をかりて「滝口修三先生の精神を忘れぬ」と編集への思いを述べさせて頂きましたが、私たちは、紙面の中で、主として、古代から近代へと続く歴史の中に美と真実を求めると同時に、今日の日本の美のある部分をつかさどってきた滔々たる「モダニズム」の流れにも充分に目を向けよう、と申し合わせてまいりました。そのような中で、日本固有の新しい「造形」と「魂」を全地球的に発表されておられる芸術家の一人、山口勝弘先生には、不思議なご縁を頂いて、創刊号以来、表紙のデザインを制作していただいております。その程、急に体調を崩され、都内の病院でしばらく療養されることになりましたので、今號では一九七〇年代のドローイングの中から、その後の先生の作品展開を予感させる一点を選び掲載することにいたしました。先生の一日も早い快癒をお祈りします。

藝術文化雑誌『紫明』編集長 小山泰三



◇作品解説


本號の発刊前、山口は突然の病に倒れてしまいます。そこで急遽編集部が過去(1970年代)のドローイングの中から作品を選定することになりました。そこには、球根から力強く育った植物のようなものが描かれています。