「モ チ ー フ 」Motivは、ここでは、特徴ある旋律の断片として用いている。従来(あるいは他の多くの著述)は「主 題 Theme」と言う言葉が用いられている。しかし、「主題」は、より長いフレーズを意味することが多く、それとは異なる<断片>、つまりより短い(小さい)旋律の動きを明確にするためにこの言葉を使用している。
1:自由までは、可能な限り多様な旋律やリズムの変化を求めたが、この対位法では、モチーフ(Motiv 動機:音楽の最も小さな単位で、それによって音楽全体を構成する原資となるもの)を意識した旋律作りに踏み込んでいくのがいいだろう。これは「カノン canon やフーガ Fuge」の予備的学習にもなるだろう。
「モチーフを意識する」方法としては、リズムや旋律を模倣することが考えられるが、もう少し高度な模倣技術(後述する「反行 I」「逆行 R」「拡大」「縮小」)など試みてもいいだろう。いくつか例示しておくので参考にしていただきたい。
(譜例25を基にしている)
「模倣」のより多彩で高度な方法については、別に準備する「フーガとカノン」において詳説する。
長6度の使用をしているところを明記しているが、このような「模倣」の手法では、こうした調6度も使用は許容される べきものと考える。
Motiv を使用することで、音楽にまとまりが出てくることが理解されより音楽的 な追求が可能となろう。
更に「自由対自由」においても、1小節に2和音を設定するなどの形で、すでに 生じていることではあるが、Motiv を意識したものは、(模倣やフーガでも言えるこ とだが)聴覚がより旋律の流れに引きつけられ、さらに声部が増え、複雑化すると、 並達5度、8度など、これまで禁じられていたことが許容されることも出てくる。 しかしその場合であっても、上声がジャンプ(跳躍)して、完全5度、8度に到達 する(並達)ことは避けなければならない。