細胞構造学・原生生物学 

「繊毛虫の収縮機構に関する研究・原生生物の種組成と環境との関係に関する研究」

原生生物の細胞運動，特に繊毛虫の細胞体収縮に関与する細胞骨格の構造変化と機能の解明を主なテーマとして研究を行っています．特に，繊毛虫SpirostomumやStentorなどでみられるセントリン様収縮性タンパク質で構成された繊維系の立体構造とその収縮メカニズムについて，超微形態や生化学的な手法を用いた解析を行っています．また，宍道湖・中海に生息する原生生物の種組成を明らかにし，さらに環境要因や種間関係との関連性をもとに現状の種組成が形成された要因について明らかにすることを目的として研究を進めています． 

「宍道湖・中海に生息する繊毛虫の生息分布」

ここ数年間にわたって宍道湖・中海に生息する繊毛虫の調査を行い，特定の繊毛虫の出現と環境の間に相関関係について調べました．その結果， Strobilidium gyransは年間を通じて観察され，温度，塩分濃度やCODの影響をあまり受けることなく広く分布していること，Mesodinium pulex, Stentor muelleri,はCOD値が低い環境で出現し，CODが高くなるとほとんど見られなくなることなどが明らかになりました．pHやCODなどの水質測定をするとサンプリングを行った瞬間のそれぞれの数値を知ることが出来ます．このような測定は，宍道湖や中海の環境がどの様に変化しているかを知るうえで大変重要です．それに加えて，さらに指標生物となる種に注目すると，採水した時に生息している種はその時点に至るまでにその環境の中で生き延びてきたということですから，サンプリングを行った瞬間のみならず，その種が生息した環境の長期的な水質をも反映するデータを得ることが出来ると考えることが出来るのです．今後もさらなる指標種を明らかにし，これらをモニタリングすることで，一過性の水質変化と長期的な水質変化の両方を把握することを目指しています． 

• M Shimada et al.  (2024) Morphological reconstruction during cell regeneration in the ciliate Spirostomum ambiguum. European Journal of Protistology 94:126079

• H Ishida et al. (2023) Method of preparing unfixed ciliates for scanning electron microscopy without noticeable artifacts. Frontier in Protistology1:1293531

• H Ishida et al. (2022) SEM observation of non-fixed and water freeze-dried Spirostomum ambiguum. European Journal of Protistology 85:125896

• T Akihiro et al. (2022) Tropomyosin micelles are the major components contributing to the white colour of boiled shellfish soups. Sci Rep 12:15253

• H Ishida et al. (2016) Use of Ionic Liquid for Scanning Electron Microscopy of Protists.  IJNTR 2:43-46