この他、復習として下記を指導してもらいました。
示 塾 生<広瀬淡窓作>、山行<杜牧作>、泊壇浦<木下犀潭作>、青 葉 之 笛<松口月城作>、清平調詞其の一<李白作>、除夜作<高適作>
「意訳」
にわか雨が盛んに降ってきて、花は風のために散ってしまい、花見客たちも川の東西に逃げ去ってしまった。
煙のように立ちこめる雨雲は変幻の妙を描き出し、山の景色はまことに素晴らしい。加えて、橋のほとりで釣り糸を垂れている一人の老人の姿が一層の風情を添えている。
「漢詞の読み方」
嵐山雨景 <篠崎 小竹>
急雨沛然として 花風に散り
遊人去り尽くす 水の西東
煙雲変幻して 山奇絶
付与す 橋頭の 一釣翁
「意訳」
二羽の鶯が緑の柳の木に鳴いており、一列になった白鷺が青空高く上がっていく。
また窓からは西の峰の、千年も消えない雪が眺められ、門前には遠い東の呉の地からやってきた船が停泊しているのが見える。
「漢詞の読み方」
絶句(一) <杜 甫>
両箇の黄鸝 翠柳に鳴き
一行の白鷺 青天に上る
窓に含む西嶺 千秋の雪
門に泊す東呉 万里の船
通夜式で皆で献吟する「追悼の詞」を練習しました。
「意訳」
人の命は夢や煙のようにはかなく定めのないものと分かってはいるが、君の死に遭(あ)ってみると唯ぼんやりとして、心も暗く打ち沈んでしまう。
在りし日の君の穏やかで優しい顔つきがほのかに浮かんできて、その姿を偲びつつ名前を呼んでも君は答えてくれず、果てしなく広がる虚空に恨みだけが永く続いて、尽きることはない。
「漢詞の読み方」
追悼の詞 <安達 漢城>
人生夢の若く 亦煙の如し
君逝きて茫茫 転暗然
髣髴たる温容 呼べども答えず
大空漠漠 恨み綿綿
この他、大阪府詩吟連盟出吟課題詩を一通り練習しました。
稲叢懐古<太宰春台> 、海南行<細川頼之>、某楼に飲む<伊藤博文> 、塾生に示す<広瀬淡窓>、獄中の作<武市半平太>、山行同志に示す<草場佩川>、酒に対す<白居易>、楓橋夜泊<張継>出 塞<王之渙>
「意訳」
見渡す空には一点の雲もなく晴れわたり、実によい天気である。秋の気配が深まって、あたりの景色もはっきり見える。
しばらく杖を止めて東山の景色を眺めていると、翠(みどり)の樹々は紅葉を織りまぜて、まるで錦を見ているようである。
「漢詞の読み方」
晩秋晴を弄す <宮崎 東明>
万里雲無く 真に快晴
秋深くして 四面 亦分明
筇を停めて坐ろに見る 東山の景
翠樹紅楓 錦を成して横たわる
「意訳」
人は報いを目的として施すのではなく、人に施すことを自分の喜びと為すのである。徳は高名を求めずに、いつも陰に在るべきだと思う。
その為に毎日謙譲の気持ちを忘れず、傍若無人な振る舞いや人と争うことなどを避ける、寛容な気持ちが大切である。
「漢詞の読み方」
偶感(其の一) <宮崎 東明>
恩は報いを覓むること無くして
自ら喜びと為し
徳は名を求めずして 常に陰に在り
日日忘るる勿れ 謙譲の事
妄心去る可し 亦争心
「意訳」
人はいつも、争い事があれば、その原因は相手にあると思いがちである。だがこれは、すべて自分がそのもとをなしていると知らねばならない。
従って、争い事が起きた場合には、常に自分の行いをよく省みて、物事の真の姿を悟るべきである。このようにすれば国と国との争い事などもたちまち解決するはずだ。
「漢詞の読み方」
偶感(其の二) <宮崎 東明>
事起これば其の源 人に在りと為す
知る可し総て是 吾が身より出ずと
須らく能く反省して 真実を悟らば
世界の喧争 忽ち因を去るべし
「意訳」
一枝のなまめかしい牡丹の花に露がしっとりとおり、芳香を凝結して散らせないようにしているようだ。(夢の中で)「朝には雲となり暮れには雨となる」と契った巫山の女神の姿が夢から覚めた時に見当たらなければ襄王は断腸の思いをすることであろう。(それにひきかえ、今、ともに牡丹を観賞している女神・楊貴妃は夢ではなく現実である)
ちょっとおたずねするが、漢の成帝が置いたという美人ぞろいの後宮にあって誰が楊貴妃と比較できましょうか。それは可愛らしい趙飛燕が新たに化粧したばかりの美しさを頼みにし、誇らかにしている姿こそまず比べられるでしょう。
「漢詞の読み方」
清平調詞(其の二) <李白>
一枝の濃艶 露香を凝らす
雲雨巫山 枉げて断腸
借問す漢宮 誰か似るを得ん
可憐の飛燕 新粧に倚る
「意訳」
名花牡丹と傾国の美人楊貴妃の両方の美しさにご満悦の様子で、そのありさまを皇帝は、笑顔でいつまでも眺めている。
皇帝の寵愛を得て、楊貴妃は春風の限りない愁いを解きほぐして、沈香亭の北の欄干によって花を賞でている。
「漢詞の読み方」
清平調詞(其の三) <李白>
名花傾国 両つながら相歓ぶ
常に 君王の笑いを帯びて 看るを得たり
解釈す 春風 無限の恨み
沈香亭北 欄干に椅る
「意訳」
一年が終われば新しい年の春がおとずれてくれる。(春はこのように永遠に巡ってくるが)人間の寿命は百歳といわれるけれど、百歳まで生きた人は今まで一人もいない。
このように咲く花の前でお互いに酒を飲んで、いったい生涯のうちに何度酔うことができるだろうか。そう幾度もあるまい。(だから今日一日は存分に飲もう) 一万銭で酒を買ってこいよ。金がないとか貧相なことは口にしないでくれ。
「漢詞の読み方」
城東の荘に宴す <崔敏童>
一年始めて有り 一年の春
百歳曽て無し 百歳の人
能く花前に向かって 幾回か酔う
十千 酒を沽うて 貧を辞する莫れ
「意訳」
この美しい五色の雲を見ると楊貴妃の衣装が思われ、牡丹の花を見ては美人のあでやかな容色が連想される。いま春風が沈香亭の欄干を吹き渡る中、光る露はこまやかにしっとりと輝いている。
このような美人は、西王母の住む群玉山のほとりでもお目にかかるのでなければ、きっと月光の降り注ぐ玉でつくられた宮殿で巡り合う人なのだろう(宮殿でしかお逢いできないでしょう)。
「漢詞の読み方」
清平調詞(其の一) <李白>
雲には衣裳を想い 花には容を想う
春風檻を払うて 露華濃やかなり
若し 群玉山頭に 見るに非ずんば
会ず 瑶台月下に 向かって逢わん
「意訳」
洞庭湖から西方を望めば、楚江が分流して湖に入っている。湖水が尽きるところ(水平線)、南の空には一点の雲もなく晴れわたっている。
やがて日は落ちて、長沙の方は、秋に色づいた陸地が遠く見えている。ただ広々としていて、悲劇の女神である湘君をどこで(どの方角に)弔ってよいかわからない。
「漢詞の読み方」
洞庭湖に遊ぶ <李白>
洞庭西に望めば 楚江分かる
水尽きて南天 雲を見ず
日 落ちて 長沙 秋色遠し
知らず 何れの処にか 湘君を弔わん
「意訳」
霧に似ているが霧ではなく、靄(もや)に似ているがそうでもなく、また雨に似ているが雨でもない。しきりに降っているようで、あたりはぼんやりしているが、さらに入り混じって乱れ散っている。
しばらくして一陣の風が吹きおこって、これらを持ち去っていったかと思うと、そのあとに前山を横切る一筋の雲が現れた。
「漢詞の読み方」
雲 <大窪 詩仏>
霧に似 煙に似て 還 雨に似たり
霏霏漠漠 更に紛紛
須臾にして風起こり 吹き将ち去り
去って前山 一帯の雲と作る
「意訳」
越王勾践が長年の仇であった呉王夫差を打ち破って国に凱旋した。その戦いに従って行った忠義な者たちは、故郷に帰るとみな錦織りの服をまとって、華美な生活にふけった。
そのころ宮廷の女官などにも美しい人が多く、まるで花が春殿に満ちていると思えるほどであった。しかし、今は当時をしのぶよすがもなく、ただ鷓鴣が寂しく飛び交っているばかりである。
「漢詞の読み方」
越中懐古 <李白>
越王勾践 呉を破って帰る
義士家に還りて 尽く錦衣
宮女花の如く 春殿に満つ
只今惟 鷓鴣の飛ぶ有り
「意訳」
旅館の寒々とした物わびしい灯火のもと、私は独り眠られない夜を過ごしている。旅人の心はどうしてこのように一層さびしさを感じるのであろうか。
故郷の家族の者たちは、きっと大晦日の今夜、遠くを旅している私のことを思ってくれているだろう。明日の朝、元旦になれば、この白い鬢面(びんめん)のわが身は、また一つ年齢を加えなければならないのだ。
「漢詞の読み方」
除夜の作 <高 適>
旅館の寒灯 独り眠らず
客心何事ぞ 転凄然
故郷今夜 千里を思う
霜鬢明朝 又一年
「意訳」
黎明(れいめい)の横雲を破って東の空に、赤々と一直線に昇ってくる朝日のように、さわやかな気分を常に持ちたいものである。
「読み方」
さしのぼる<明治天皇御製>
さしのぼる 朝日の如く さわやかに
もた まほしきは 心なりけり
「意訳」
才子といわれている人は昔から物事をやり損なうことが多く、才能にまかせた議論を好む結果、議論倒れになってしまい、結局は世の中に何の利益ももたらさない。
だれが気づいているだろうか、いや誰も気づかない。自然は無言の中に運行し、春ともなれば山々は青々と茂り、花も時を違えずに紅く咲くということを。
(漢詞の読み方)
失題 <古荘 嘉門>
才子元来 多く事を誤る
議論畢竟 世に功無し
誰か知らん 黙黙 不言の裏
山は自ずから青青 花は自ずから紅なり
「意訳」
かたつむりの角の上のような小さな世界で人々は何を争っているのか。あたかも火打石の火花のような一瞬のはかないこの世の中に、仮にこの身を置いているというのに。
金持ちであろうと貧しかろうと、それなりに楽しく暮らそう。口をあけて気持ちよく笑わないのは、愚かな人である。
(漢詞の読み方)
酒に対す <白 居易>
蝸牛角上 何事を争う
石火光中 此の身を寄す
富に随い貧に随うて 且く歓楽す
口を開いて笑わざるは 是痴人
「意訳」
自分が胸に抱え持っている盛んな意気込みは厳しく雄大で(何人にも愧=は=じることなく)大空に満ち溢れている。わが日本帝国において自分以外に誰が天皇陛下の御威光を盛んならしめる者がいるであろうか。
今、この高楼に上って幾杯かの酒を傾けながら古今の英雄・豪傑をあれこれ物色してみるに、誰も彼も自分の眼中に入って、ものの数でもなく思えるのである。
(漢詞の読み方)
某楼に飲む <伊藤 博文>
豪気堂堂 大空に横たわる
日東誰か帝威をして 隆んならしめん
高楼傾け尽くす 三杯の酒
天下の英雄 眼中に在り
「意訳」
海辺の町はずれの湊川から吹いてくる雨雲の風は、あたりの草木までも生臭い感じにさせる。しかし大楠公の忠誠は歴史上でも特に明記されて、その名は永遠に芳しく伝えられている。
正成はこの桜井の駅に来て、体中に満ちたあふれる後醍醐天皇に対する忠誠の熱血の余滴を子供の正行(まさつら)に分け与えて、将来賊を倒し天皇に忠誠を尽くすように訓話して河内に帰した。
(漢詞の読み方)
桜井訣別 <頼 山陽>
海甸の陰風 草木腥し
史編特筆 姓名馨し
一腔の熱血 余瀝を存し
児曹に分与して 賊庭に灑がしむ
「九日斉山に登高す」を教えてもらいました。
「意訳」
長江の流れは秋の影を宿し、雁が南へと渡り始めた。私は客人と酒壺を携えて、薄みどりの靄に包まれた斉山の中腹あたりまで登った。
俗世間では、大きく口を開いて愉快に笑えるようなことには、めったにあえない。せめてこの佳節を思う存分楽しみ、菊の花を頭にいっぱい挿して帰ろう。
そしてすっかり酒に酔って憂さを忘れ、このめでたい節句を祝うことにしよう。高所に登って沈む夕日を眺めても、悲しむ必要はない。
昔から今に至るまで人はこのように生き、このように暮らしてきたのであって、斉(せい)の景公(けいこう)のように、牛山に登って老いと死の訪れに涙を流すことはない。
(漢詞の読み方)
九日斉山に登高す <杜牧>
江は秋影を涵して 雁初めて飛び
客と壺を携えて 翠微に上る
人世口を開いて 笑うに逢い難く
菊花須らく 満頭に挿して帰るべし
但だ酩酊を将って 佳節に酬いん
用いず登臨して 落暉を恨むを
古往今来 只此くの如きのみ
牛山何ぞ必ずしも 独り衣を霑さんや
「意訳」
山は崩れて無くなることもあり、海がひっくり返って陸となることもあるが、赤穂浪士47人の忠誠の魂は消えて無くなることはない。
今、泉岳寺に来てみると、墓の前やそのあたりの一面は、草や苔が青々と生えて、しっとりと湿っている。定めしこれは、この墓に詣でる人や前を通る人々が、その忠誠に感激して流した涙の痕であろう。
(漢詞の読み方)
泉岳寺 <阪井 虎山>
山岳崩る可く 海翻る可し
消せず 四十七臣の魂
墳前満地 草苔湿う
尽く是 行人 流涕の痕
「意訳」
人間は、辛(つら)く苦しいことを何度も経験して初めて志が堅固になるものである。立派な男というものは、たとえ玉となって砕け散るようなことになっても、瓦となって生きながらえるのを恥とするものである。
我が家には先祖から伝わった子孫の守るべき家訓があるが、世間の人は知っているであろうか。それは、子孫のために田地など財産を買い残すことはしないということである。
(漢詞の読み方)
偶 感 <西郷 南洲>
幾たびか辛酸を歴て 志始めて堅し
丈夫は玉砕するも 甎全を愧ず
吾が家の遺法 人知るや否や
児孫の為に 美田を買わず
「意訳」
船の窓から外を見ると、月もはや落ちたのに、なかなか眠ることができない。今宵、壇の浦に船泊りして、まだ午前4時ごろなのに、生暖かい春風が吹き渡る。
折から、漁船の吹き鳴らす笛の音が、入水(じゅすい)した安徳天皇をはじめ平家一門の恨みを込めるかのように一声高く響いた。見渡せば養和陵下あたりの海面は水煙が立ち込めて、そぞろ哀愁に満ちていた。
(漢詞の読み方)
壇の浦に泊す <木下 犀潭>
篷窓月落ちて 眠りを成さず
壇の浦の春風 五夜の船
漁笛一声 恨みを吹いて去り
養和陵下 水煙の如し
「桜井訣別 」伊藤博文作を教えてもらいました。
「意訳」
海辺の町はずれの湊川から吹いてくる雨雲の風は、あたりの草木までも生臭い感じにさせる。しかし大楠公の忠誠は歴史上でも特に明記されて、その名は永遠に芳しく伝えられている。
正成はこの桜井の駅に来て、体中に満ちたあふれる後醍醐天皇に対する忠誠の熱血の余滴を子供の正行(まさつら)に分け与えて、将来賊を倒し天皇に忠誠を尽くすように訓話して河内に帰した。
(漢詞の読み方)
桜井訣別 <頼 山陽>
海甸の陰風 草木腥し
史編特筆 姓名馨し
一腔の熱血 余瀝を存し
児曹に分与して 賊庭に灑がしむ
「意訳」
自分が胸に抱え持っている盛んな意気込みは厳しく雄大で(何人にも愧=は=じることなく)大空に満ち溢れている。わが日本帝国において自分以外に誰が天皇陛下の御威光を盛んならしめる者がいるであろうか。
今、この高楼に上って幾杯かの酒を傾けながら古今の英雄・豪傑をあれこれ物色してみるに、誰も彼も自分の眼中に入って、ものの数でもなく思えるのである。
(漢詞の読み方)
某楼に飲む <伊藤 博文>
豪気堂堂 大空に横たわる
日東誰か帝威をして 隆んならしめん
高楼傾け尽くす 三杯の酒
天下の英雄 眼中に在り