有機物理化学研究室

生物-物理化学グループ

News

2024年719日 酒井くんとBaileyくんがChemistry Summer School 2024でポスター発表しました。

2024年6月24-28日 谷口くんと柴田が京都国際会議場で開催されたIUPAB2024(国際生物物理会議)でポスター発表しました。

2024年6月3-4日 学術変革領域「光合成ユビキティ」の第3回領域会議に、学生らと柴田が参加しました。

2024年4月 学術変革領域「光合成ユビキティ」の公募研究に無事採択されました。

2024年3月17-19日 神戸で開催された第65回日本植物生理学会年会に、曽條くんと柴田が参加し、ポスター発表しました。

2024年3月 張くんの論文がJ. Phys. Chem. Bに出版されました

「生物物理学」と呼ばれている分野があります。このグループでは主に、この分野の研究、特にその中でも「光合成」を主なターゲットとして研究しています。なぜ、理学部化学科で「生物物理学」を研究するのか?「化学」という文字も含まれていないのに、などと思う人もいるでしょう。

なぜ、理学部化学科で生物物理学の研究?

「生物物理学」という名前の由来は、かつて物理学者が生命現象に興味を持って新しい物理学の領域を開拓しようとして始まった、という歴史にあります。様々な生命現象がその対象となりますが、その中で生体中で機能する様々な分子の振舞いや機能発現の機構を明らかにすることを目指す研究が、現在大きな比重を占めます。そして、このことを実現するにはまさに物理化学が必要であり、だからこそ化学科でやるべき研究なのです。ここではあえて、「生物-物理化学」という呼び方にします。

タンパク質やDNAなどの生体分子は巨大かつ複雑で、化学を勉強してきた者には捉えどころのないものに見えるかもしれません。一方で、最近のクライオ電子顕微鏡の単粒子解析(2017年ノーベル化学賞)という技術の進展により、多くの巨大生体分子の構造が原子レベルで解明されてきました。タンパク質は、生体反応が適切に進行するように反応場を提供しますが、反応場にある各原子分子の配置が精密に分かっているのです。これってすごいことです。このような膨大な情報を元に、複雑な生体反応の機構を物理化学に立脚して理解しようとする営みが「生物物理学」の中にあるのです。そういう研究、ワクワクしませんか?

以下のような特徴が、生物物理学の魅力(?)だと思います

光合成研究の特色

 生物物理学の他の分野と比較すると、光合成の研究では光と分子の関わりが重要であるという特色があります。多くの生命現象ではタンパク質やDNAなどの生体高分子が主役となりますが、光合成ではクロロフィルやカロテノイドなどの色素分子やキノンなどの電子移動活性のある分子、さらにはアミノ酸に配位結合する金属クラスターなどが、タンパク質と同等かそれ以上に重要な役割を果たします。実際、タンパク質を使わずに人工系で光合成と同じことをしようとする人工光合成への試みが精力的に行われています

 このような特徴のため、光合成の研究では分子の一重項励起状態や三重項励起状態、またこれらの状態からの緩和が重要です。光合成の光反応では、励起状態からの酸化還元反応やエネルギー移動過程はキーとなる反応ですがこれらを理解する上で物理化学においてこれまでに考えられてきた概念は非常に有効なのです。やはり、光合成の研究でも化学が大事となることが理解できるでしょう。

 光合成研究の別の特色として、非常に広い科学の分野と繋がっていることがあります。化学や物理学、生物学はもちろんとして、農学や工学とも繋がります。また、酸素を発生する光合成が地球に誕生(0億年前くらいと言われています)したことで、地球の大気に大量の酸素がもたらされそれにより地質にも大きな影響がありました。そのため、光合成の研究は、大気科学や気象学、地球科学などにまで繋がっていくのです。こんな学問分野、ワクワクしませんか?

手作りの装置たち