※先制医療とは、発症前に高い精度で発症予測あるいは正確な発症前診断を行い、適切な時期に治療や介入を実施して発症防止あるいは遅延させる医療のことです。
必須アミノ酸の一つであるトリプトファンは、生体内で代謝されると、キヌレニンをはじめとするいろいろな代謝産物が生成します。これらの代謝産物は、精神疾患や免疫が関与する疾患などの病態に関与しています。
トリプトファン代謝経路中の代謝産物測定による新規バイオマーカー開発や、代謝経路中の酵素阻害剤による治療薬の開発を進めています。
精神疾患、脳神経疾患、腎疾患などの患者検体や疾患モデルマウス由来検体のメタボローム解析を行い、トリプトファン代謝と病態の関係解明や診断法の開発を目指しています。
統合失調症の症状の一つである認知機能障害は、患者の予後や社会的・職業的機能の回復に影響を及ぼし、患者さんの社会復帰を妨げQOLを低下させます。トリプトファン代謝経路中の酵素阻害に基づく創薬研究を行っています。
皮膚が赤くなって盛り上がったり、かさぶたができたりする乾癬には、トリプトファン代謝の異常が関与しています。遺伝子欠損マウスなどを用いた解析により、トリプトファン代謝の制御による乾癬の治療法の開発を行っています。
我々の研究室は、同一個人の暦年的な検診データ、食習慣調査、ストレス調査、運動習慣をデータベース化するバイオバンク事業を共同研究機関(RECHS)との協同により行っています。これらのデータベースおよび血清サンプルを機械学習を用いて解析し、精神疾患や生活習慣病を発症する前に予測する診断システムの開発を行っています。
多くのがんに対して使用されている抗がん剤の一つであるシスプラチンは、副作用として腎障害や聴覚障害(難聴)を引き起こし、治療の継続や患者さんの予後、QOLに大きな影響を及ぼします。我々の創薬研究により同定したシスプラチンを代謝する酵素の阻害剤は、シスプラチン誘発性腎障害を抑制することを明らかにし、現在、本学腫瘍医学研究センターや治験・臨床研究支援センターとの協同により、本学大学病院で臨床研究を実施しています。
聴覚障害に対する効果も細胞や動物実験を用いた研究により明らかにし、シスプラチンの副作用を予防・治療する薬の開発を目指します。
精神疾患やがん、感染症などの診断薬開発や機能性食品の開発を行っています。これまでに、新型コロナウイルスのPCR検査や抗体検査の開発などを行ってきました。企業との共同研究により、研究成果の実用化・社会実装を目指しています。
主な共同研究企業
・富士フイルム株式会社(健康医科学創造共同研究部門):精神疾患、がん、内分泌疾患
・株式会社日清製粉グループ、オリエンタル酵母工業株式会社:生活習慣病など
・マルコメ株式会社:機能性食品の開発