距離測量と角測量が誤差なく行われていれば、緯距の総和と経距の総和は0になるはずです。ところが、実際の測量では必ず誤差が含まれ、次式のように表されます。
このとき、ELは緯距の誤差 [m]、EDは経距の誤差 [m] です。
この二つを三角形の辺としたときの斜辺が実際の誤差であり、この誤差を閉合誤差といいます。
このとき、Eは閉合誤差 [m] です。
測量の精度はトラバースの大きさに対する閉合誤差の大きさの比で論じられるべきであり、トラバース測量では全測線長に対する閉合誤差で表されます。この測量の精度の目安となる値を閉合比といい、次式で表されます。
このとき、1/Pは閉合比です。
閉合比の分母は一般的に10の位で四捨五入されます。また、トラバース測量の閉合比の許容範囲は次の値が目安となっています。
ここまでの話は閉合トラバースです。結合トラバースの緯距の誤差と経距の誤差は次式で表されます。
結合トラバースの閉合誤差と閉合比は閉合トラバースと同じ式で求めることができます。
閉合誤差の調整にはコンパス法則とトランシット法則の二通りあります。
①コンパス法則
コンパス法則は角測量と距離測量の精度がほぼ等しいと考えられるときに用いられる調整方法です。理論は平板測量の細部図根測量である道線法と全く同じで、緯距と経距の誤差を測線長に比例して配分していきます。道線法の調整方法は3.2 平板測量の方法を参照してください。では、緯距と経距の誤差の調整量を式で表していきます。
②トランシット法則
トランシット法則は角測量の精度が距離測量の精度より良いと考えられるときに用いられる調整方法です。緯距と経距の誤差を緯距・経距の長さに比例して配分する方法であり、式で表すと次のようになります。
トラバースの出発点を原点としたとき、各測点のX座標を合緯距、Y座標と合経距といいます。では、例題を1問解いていきます。
例題1:下表に示す結果を用いて閉合誤差と閉合比を求め、コンパス法則およびトランシット法則で閉合誤差を調整せよ。また、コンパス法則で調整した値を使って各測点の合緯距と合経距を求めよ。
まずは、緯距および経距を合計し、閉合誤差を求めていきます。
次に、閉合比を求めます。
では、コンパス法則を用いて緯距の調整量を求めていきます。このとき、小数点第3位で丸めると、合計した値が0.063 [m] となってしまい、緯距の誤差と一致しなくなります。そこで、切り上げされた測点の中で小数点第4位以下の値が最も小さいところを調整します。今回は、⊿L3 = -0.007 616 [m]、⊿L6 = -0.010 623 [m] となったので、⊿L3を-0.007 [m] に調整することで整合性をとります。
続いて、コンパス法則を用いて経距の調整量を求めていきます。緯距のときと同様に調整を行います。
コンパス法則による閉合誤差の調整量および調整緯距、調整経距を表にまとめていきます。
また、トランシット法則を用いて緯距の調整量を求めていきます。今回も、小数点第3位で丸めた値を合計すると0.063 [m] となってしまうため、切り上げた測点の中で小数点第4位以下の値が最も小さいところを調整します。⊿L2 = -0.011 46 [m]、⊿L4= -0.008 53 [m] となったので、⊿L2を-0.011 [m] に調整することで整合性をとります。
同様に、トランシット法則を用いて経距の調整量を求めていきます。
では、トランシット法則による閉合誤差の調整量および調整緯距、調整経距を表にまとめていきます。
最後に、各測点の合緯距、合経距を求めていきます。
まとめとして、トラバース測量の誤差を閉合誤差といい、トラバース測量の精度の目安となる値を閉合比といいます。閉合比は全測線長に対する閉合誤差の大きさの比で表されます。また、閉合誤差を調整する方法としてコンパス法則とトランシット法則があります。さらに、トラバースの出発点を原点としたときの各測点のX座標を合緯距、Y座標と合経距といいます。