写真測量において偏位を考えるとき、三つの特殊な点が重要となります。それはレンズの光軸と地表面の交点である主点、交角θを二等分する線と地表面の交点である等角点、鉛直軸と地表面の交点である鉛直点です。
特殊三点の縮尺を式で表すと次のようになります。交角θは5°以下と微小であり、secθは1より大きな値となるため、特殊三点の縮尺は鉛直点、等角点、主点の順に大きくなります。
また、航空カメラの傾きによる偏位量は次式によって求めることができます。
航空カメラの傾きによる偏位以外にも、フィルムや印画紙の伸縮による偏位、土地の高低差による偏位があります。フィルムや印画紙の伸縮による偏位は微小量であり、無視することができます。土地の高低差による偏位はあらかじめ高低差が分かっていれば、偏位量を求めることができます。
下図のように鉛直写真を撮影したとき、高低差は空中写真上で⊿r分だけ偏位することが分かります。このときの、偏位量を求めていきます。まずは、△Oaa'と△OAA''が相似であることを利用して式を立てていきます。
また、△Ona'と△ONA'も相似であることから、式が次のように立てられます。
両式より高低差による偏位量は次のように求められます。
この式から、高低差が大きいほど偏位量は小さくなり、撮影高度が大きいほど変位量は小さくなることが分かります。では、例題を2問解いていきます。
例題1:焦点距離15 [cm]、画面の大きさ23.0 [cm] ×23.0 [cm] の航空カメラを用いて、海抜高度3,500 [m] から平坦な土地を鉛直写真で撮影した。この空中写真の鉛直点(主点)から80 [mm] 離れた地点の高さが地盤高より120 [m] 高かった。このときの偏位量を求めよ。
必要な諸量は例題文にありますので、値を高低差による偏位量の式に代入していきます。
例題2:焦点距離15 [cm]、画面の大きさ23.0 [cm] ×23.0 [cm] の航空カメラを用いて、海抜高度2,200 [m] から標高175 [m] の平坦な土地を鉛直写真で撮影した。この空中写真の鉛直点(主点)から72 [mm] 離れた地点に高塔が写っており、高塔の像の長さは2.0 [mm] であった。この高塔の先端部の標高はいくらか。
まずは、空中写真の撮影高度を求めていきます。
では、高塔の高さと標高を求めていきます。
まとめとして、写真測量の偏位には、航空カメラの傾きによる偏位、フィルムや印画紙の伸縮による偏位、土地の高低差による偏位があります。航空カメラの傾きよる偏位はカメラを垂直にすれば偏位量を取り除くことができます。また、フィルムや印画紙の伸縮による偏位量は微量であり、無視することができます。