これまでは、トラバース測量や三角測量により骨組測量を行い、その骨組を使って平板測量により図面化し、地形測量により路線の設置位置を求めてきました。しかし、このような手順で広範囲の地形図作成を行うと作業が長時間にわたるため、出来上がった地形図は作業中に生じた地形・地物の変化に対応することができませんでした。このような背景から作業が迅速に行え、精度も均一な写真測量の技術が発展してきました。
写真測量とは、目をカメラに置き換え、写真から地形や地物に関する情報を求める技術をいいます。写真測量にも色々な分野があるのですが、土木分野では空中写真測量を指すことがほとんどです。
空中写真はカメラの傾きによって三つに分類されます。鉛直軸とカメラの光軸のなす角が0.2°未満のものを鉛直写真、0.2°〜5.0°のものを垂直写真、5°より大きいのものを斜め写真といいます。写真測量を行うためには鉛直写真が好ましいのですが、カメラが気流や風向き、航空機やUAV(通称ドローン)の振動などで傾いてしまうため、垂直写真までは使用が許容されています。
空中写真の縮尺は三角形の相似から次のように求めることができます。
このとき、1/mは空中写真の縮尺、fはレンズの焦点位置(画面距離) [m]、Hは撮影高度 [m] です。
空中写真を撮影するときは隣接する写真を重複させなければいけません。隣接する写真は60%重複させる必要があり、これをオーバーラップといいます。同様に、隣接する飛行コースも30%重複させる必要があり、これをサイドラップといいます。
また、縮尺を一致させたり、写真を接合させたりするときに目印となる点を決定する必要があり、これをパスポイントといいます。パスコースは正確に把握できる測点を1点、その上下7〜10 [cm] に1点ずつの計3点を選びます。
では、例題を2問解いていきます。
例題1:焦点距離150 [mm]、画面の大きさ23.0 [cm] ×23.0 [cm] の航空カメラを用いて、海抜高度3,000 [m] から平坦な土地を鉛直写真で撮影した。この撮影で得た空中写真の橋の長さを計測したところ65 [mm] であった。また、同じ橋を縮尺1/25,000の地形図で計測したところ50 [mm] であった。この橋の海抜高度はいくらか。
まずは、地形図から橋の実際の長さを求め、空中写真の長さと比較することで空中写真上の橋の縮尺を求めていきます。
よって、橋の縮尺は1/19,231であることが分かりました。この縮尺を用いて橋の撮影高度を求めていきます。また、橋の海抜高度は航空カメラの海抜高度から橋の撮影高度を引けば求めることができます。
例題2:焦点距離15 [cm]、画面の大きさ23.0 [cm] ×23.0 [cm] の航空カメラを用いて、海抜高度1,600 [m] から標高100 [m] の平坦な土地を鉛直写真で撮影した。同じ高さの2つの高塔が写っており、縮尺1/25,000の地形図で高塔の先端の距離を計測すると29 [mm]、空中写真で計測すると75 [mm] であった。この高塔の高さはいくらか。
まずは、空中写真(高塔)の縮尺を求めていきます。
つぎに、空中写真(高塔)の縮尺から撮影高度を求めていきます。また、高塔の高さは航空カメラの海抜高度から塔の標高と撮影高度を引けば求まります。
まとめとして、写真測量は空中写真を使用することで、地形図を作成する際の作業を迅速に行えるようにした測量をいいます。空中写真を撮影するときは鉛直軸とカメラの光軸のなす角が0°から5°の間になければならず、また、オーバーラップやサイドラップに注意する必要があります。