日本における代表的な海岸災害としては越波災害、高潮災害、津波災害、海岸侵食、河口閉塞または港湾埋没の5種類が挙げられます。このうち、前の3つは高波、台風、地震に起因した波による浸水災害であり、残りの2つは漂砂を起因とした土砂移動による土砂災害です。
越波災害は外洋に面した海岸に高波によって生じる災害に対し、高潮災害は台風によって生じる災害です。台風の多くは北上するため、高潮災害は太平洋に面した水深の小さい湾で起きやすいです。また、津波災害は海底地震によって生じる災害であり、その発生域は主に太平洋の海岸に広く分布しています。
一方、海岸侵食は波浪による沖向きと岸向きの土砂移動のバランスが崩れたときに海浜が削り取られ、汀線が後退することによって生じる災害です。日本では1965年頃から太平洋側と日本海側ともに海岸侵食が目立ち始めました。海岸侵食が激化した主な要因としては防波堤による漂砂のバランスの崩壊、ダム建設による土砂供給の減少などが挙げられます。
河口閉塞および港湾埋没は、海岸侵食とは反対に、河口や港湾に土砂が堆積することによって生じる災害です。港湾埋没はもっぱら沿岸漂砂に起因しており、これまでも数多くの港湾が埋没被害によって放棄されてきました。
波による災害はエネルギーが膨大であり、災害が発生すると人的・物的被害は計り知れない大きさとなります。一方、土砂移動による災害は一朝一夕に発生するものではなく、長い年月をかけて徐々に生じています。そのため、人間の手で修復するためには膨大な時間と費用を要することになります。
環境面から見た海岸災害としては干潟(干潮・満潮により干出・水没を繰り返す平らな砂泥地)の消失が大きな問題となっています。1960年代は高度経済成長とともに人口増加が起き、大量の生活排水や産業排水が発生し、海岸の水質が悪化しました。その結果、明治時代に約2万 [ha] あった干潟はたった100年間で90%以上を消失しました。現在は、人工干潟などにより干潟を再生する試みも行われていますが、干潟は微妙な均衡の上で成り立っているため、再生するためには多大な費用を見積もる必要があります。ちなみに、干潟の種類には前浜干潟、河口干潟、潟湖干潟があります。
まとめとして、日本の海岸災害としては越波災害、高潮災害、津波災害、海岸侵食、河口閉塞または港湾埋没があります。また、環境面から見た災害としては水質の悪化や干潟の消失が挙げられます。