管水路の一部が動水勾配線より上にある管水路をサイフォンといいます。このサイフォンの部分では、圧力水頭が負になります。また、圧力水頭は-10.33 [m] より小さくなることはできません。このことは3.1 静水圧で証明しています。理論上では10.33 [m] 以上になると水は流れなくなるのですが、実際は水中に溶け込んだ空気が気化して管水路上部に溜まるので約8 [m] 程度で流れなくなります。
では、点①と点③にベルヌーイの定理を適応し、流速を求めていきます。また、点①と点②にベルヌーイの定理を適応し、点②での圧力水頭を求めていきます。このとき、管径が一定なので管水路内の速度はvで表すとします。
次に、流速を求めます。
また、①点と②点にベルヌーイの定理を適応し、圧力水頭を求めていきます。
他の損失水頭がある場合はそれらを考慮して式の中に入れる必要がありますので注意して下さい。それでは、例題を1問解いてみましょう。
例題:下図のような管径D=0.1 [m] でできたサイフォンがある。このとき、水が流れる最大の水位差はいくらか。ただし、摩擦損失係数f=0.02、流入損失係数fe=0.8、曲がり損失係数fb=0.3、流出損失係数f0=1.0とする。
サイフォンが働いて水が流れるためには、圧力水頭は-8.0 [m] 以上でなければいけません。そのことを考慮し、圧力水頭の式を式変形します。
この式に数値を代入すると水位差が求まります。
まとめとして、サイフォンがある部分では圧力水頭は負になります。圧力水頭は約-8.0 [m] まで下がり、それ以下になると水が流れなくなります。サイフォンの原理は透明のコップとストローがあれば再現できるので、ぜひ一度やってみて下さい。