一次元解析とは、河川の流れを縦断方向の一次元として捉え、横断方向の水理量(水深、流速、径深など)は平均を用いることで河川の計算を進めていく方法です。内容については水力学 6章 開水路の流れのおさらいとなりますので、詳しい内容はそちらを参照して下さい。このような一次元解析は幅に比べて長さが非常に大きい河川の解析において簡便かつ合理的な方法であり、河川計画に広く用いられています。
山間の渓谷から扇状地や三角州を経て河口に至るまで、河川はその様相を常に変化させています。河川の流量も降水や流出によって時々刻々と変化させています。このような流量が時間的に変化する流れを非定常流(不定流)と呼びます。しかし、非定常流の解析には膨大な計算が伴います。そこで、河床勾配に比べて流量の時間的・場所的変化が緩やかであると仮定して解法するときがあります。このように非定常流に条件をつけた流れを準定常流といいます。例えば、洪水は水深や流速がゆっくりと変化します。
一方で、中間流や地下水流は流量の時間的変化が極めて少ないのが特徴であり、このような流れを定常流といいます。定常流の内、流積や流速が時間的に変化する流れを不等流、時間的に変化しない流れを等流と呼びます。
①等流
等流は流積や流速を維持して流れる水理学的に最も理想的な流れであり、河川に作用する重力の流れ方向の力と潤辺での摩擦抵抗力が釣り合った状態です。また、動水勾配、河床勾配、エネルギー勾配が一定であり、流速の式はマニングの式やジェシーの式によって表されます。一般的に、マニングの式が使用されます。
等流では流量、流積、流速が一定のため、水深もまた一定となります。このような水深と等流水深といい、マニングの式と連続の式から求めることができます。また、河川の常射流を判断するときはフルード数を使うのが一般的ですが、等流では流量、流積、流速が一定のため、等流水深と限界水深の大小によって常射流の判断が行えます。ちなみに、等流水深が大きいと常流になります。
②不等流
不等流は流量、流積、流速が不定のため、水深もまた不定となります。水深の変化は河床勾配、等流水深、限界水深があれば求めることができ、マニングの式とジェシーの式で微妙に式が異なります。一般的に、式の美しさからジェシーの式が好まれます。
等流水深と限界水深が等しいときの河床勾配を限界勾配 icといいます。ib<icとなる水路は緩勾配水路と呼ばれ、水深は常にh0>hcとなります。反対にib>icとなる水路は急勾配水路と呼ばれ、水深は常にh0<hcとなります。そのため、緩勾配水路と急勾配水路の水面形を図示することができます。
緩勾配水路
急勾配水路
緩勾配水路の水面形
急勾配水路の水面形
水深を計算するときは上式を積分して求めてもいいのですが、計算が非常に面倒です。そこで、通常は差分手法を用いた近似計算が行われます。下流側水深をh1、上流側水深をh2とすると、次式によって水面形計算が行なえます。ただし、⊿xは微小区間とし、粗度係数は一定とします。
微小区間を小さくすれば計算精度を良くすることができますが、計算量が増大になります。そのため、微小区間は計算領域の大きさと河川の断面特性を考慮して決定しないといけません。また、斜流の場合は上流側水深から下流側水深を求めていきます。
③準定常流
流量の変化率が河床勾配に比べて無視できるような洪水流や河川流の場合は定常流の公式(連続の式とマニングの式)を用いて流量を計算することができます。また、洪水の波形や伝搬速度が変化しないと仮定するとクライツ・セドンの法則から伝搬速度を求めることができます。
洪水流などの伝搬速度は必ず流速よりも速くなるため、洪水の伝搬特性は上流側の条件のみで決まり、下流側の水理条件は影響を及ぼさないことが分かります。また、広幅長方形断面と仮定すれば、マニングの式とジェシーの式から洪水伝搬速度は次のようになります。
④非定常流
河川を長方形断面の一様水路とすると、非定常流の基礎式は次のようになります。
上式の∂A/∂tと1/g (∂v/∂t) は非定常項であり、これらの式は非線形の偏微分方程式であるために解析するのが極めて困難です。非定常流の解法としては特性曲線法などがあります。
まとめとして、河川の流れを縦断方向の一次元として捉え、横断方向の水理量(水深、流速、径深など)は平均を用いることで河川の計算を進めていく方法を一次元解析といいます。