まずは空気の圧縮性について述べていきます。人間は5 [m] ほど海に潜ると耳に激痛が走り始めます。これは、耳の中の空気が水圧によって圧縮したためです。空気は圧力がかかると簡単に体積を変化させます。そのため、海に深く潜るときは入水前に必ず耳の中の空気を抜かないといけません。また、気体の体積と圧力の関係は次式によって表わされます。この式を気体の状態方程式といいます。
このとき、nはモル数 [mol]、Rは気体の状態定数 8.314 [J/(K・mol)]、T:温度 [K] です。
新しい物理量が出てきましたがあまり気にしないでください。重要なのは、体積と圧力の関係です。
上式より、圧力と体積は反比例の関係にあり、圧力が大きくなれば空気は圧縮することが分かります。
次に水の圧縮性についてなのですが、実は水は圧縮しません。この圧縮しない性質を非圧縮性と呼びます。では、なぜ圧縮しないのでしょうか。そのこと理解するためには、まずマッハを知る必要があります。マッハとは物体の速さを音が伝わる速さで割った値であり、式で表すと次のようになります。
このとき、Mはマッハ [単位なし]、Uは物体の速さ [m/s]、cは音の伝わる速さ [m/s] です。
戦闘機を例に考えてみましょう。戦闘機は空気中を飛行します。空気中での音が伝わる速さは340 [m/s] ですので、戦闘機がマッハ2で飛び回りたいなら680 [m/s] の速度、マッハ3で飛びたいなら1,020 [m/s] の速度が必要となります。ちなみに、戦闘機はマッハ3で飛ぶことができます。
では、水中での音が伝わる速さをご存知でしょうか。おおよそですが、水中の音速は1,500 [m/s] 程度といわれています。そのため、水中をマッハ1の速度で走るためには、秒速1,500 [m/s] も進まないといけません。現在、水中を最速で動けるのは原子力潜水艦なのですが、その原子力潜水艦ですら速度は20 [m/s] 程度です。
そして、このマッハというのが圧縮性の指標となっています。ある流体中をマッハ1/3以上で動ける場合は圧縮性、1/3以上で動けない場合は非圧縮性と定義されています。戦闘機の最高速はマッハ3ですので、空気は圧縮性であることが分かります。一方で、水中最速の原子力潜水艦はマッハ1/3を超えていないため、水は非圧縮性となるわけです。余談ですが、音の伝わる速度は、次の式で表わされます。
このとき、Kは体積弾性係数 [Pa]、βは圧縮率 [m2/N] です。
水の温度が20℃のとき、体積弾性係数はK=2.20×109 [Pa]、密度は998.20 [kg/m3] となるため、音の伝わる速さcの値は1,485 [m/s] となります。他の流体における音の伝わる速度が気になった方はぜひ調べてみて下さい。
まとめとして、空気は圧縮性、水は非圧縮性です。