ポルトランドセメントの製造に必要な原料としては、石灰石、粘土、珪石、酸化鉄、石膏などが挙げられます。石灰石と粘土の概ねの比率は4:1であり、セメントの凝結時間を調整するために約3%の石膏が加えられます。また、珪石や酸化鉄は成分調整のために加えられます。
これら基本的原料に加えて、セメント業界ではさまざまな産業廃棄物の活用が行われています。その一つが混和材である高炉スラグ、フライアッシュ、シリカヒュームなどをセメント製造時に入れることです。
高炉スラグは銑鉄を製造するときにでてくる鉄鉱石内の不純物と石灰石が結合してできた副産物です。また、フライアッシュは石炭火力発電所で発生する灰を集塵機で捕集した副産物です。シリカヒュームはシリコンなどの窒素金属を製造するときにでてくる球形の超微粒子を集塵機で捕集した副産物です。高炉スラグは生成量の内40〜50%、フライアッシュは生成量のうち60〜70%がセメントの混和材として利用されています。
ポルトランドセメントの製造方法は乾式法と湿式法に大別することができますが、最近ではエネルギー効率の観点からほとんどが乾式法を採用しています。また、乾式法の製造工程は原料工程、焼成工程、仕上げ工程の3つに分けることができます。
原料工程では石灰石や粘土などの原料を正確に調合し、細かく破砕した後に、均一に混合されます。次に、焼成工程では排ガスで予熱された混合粉末を1,450℃まで加熱し、クリンカーを生成していきます。生成したクリンカーは冷却され、一度タンクに貯蔵されます。そして、仕上げ工程で冷却したクリンカーに石膏を加えて粉砕していきます。この粉砕されたものがポルトランドセメントとなります。
まとめとして、セメントは石灰石、粘土、珪石、酸化鉄、石膏などが主な原材料となります。また、産業廃棄物である高炉スラグ、フライアッシュ、シリカヒュームを混和材として使用することにより、環境保全にも役立っています。セメントの製造方法としては乾式法と湿式法がありますが、現在は乾式法が主流となっています。ちなみに、湿式法の利点としては原料の混合や粉砕が容易で均質なことが挙げられます。