セメントに水を加えて練り始めると、鉱物組成(エーライト、ビーライト、アルミネート相、フェライト相)と水が水和反応を開始します。そのなかでも、アルミネート相の水和反応が最も速いのですが、石膏を添加することによりアルミネート相の表面に微細なエトリンガイト(緻密な被膜)が形成され、急な水和反応を抑制してくれます。エトリンガイトの生成量が多すぎるとセメントを膨張させるため、石膏の量には注意する必要があります。
一方、エーライトも水と接するとすぐに水和反応を始めるのですが、10分ほど経つとエーライトの表面に水和物の薄い膜ができて水和反応が遅くなります。それから十数時間に渡ってゆっくりと水和反応が起こり、セメントの間隙にケイ酸カルシウム水和物(C-S-H)が形成されていきます。このようにして、セメントは密な状態となり、粒子間の化学結合およびファンデルワールス力により強度が増していきます。
セメントは硬化すると収縮を始めます。セメントの収縮には様々な理由があるのですが、一般的に問題とされているのは乾燥収縮です。乾燥収縮によりセメントにひび割れが発生すると強度が低減し、最悪の場合は破壊してしまうため、できる限り抑えておく必要があります。また、乾燥収縮はセメント内の水が乾燥によって蒸発することにより、表面張力が大きくなり生じます。従って、湿度が高いと表面張力が小さくなるため、膨張が起きます。
さらに、セメントは空気に触れると、湿気を吸って軽微な水和反応を起こすと同時に二酸化炭素を吸収します。これがセメント中の水酸化カルシウムと反応すると、比重および強度の低下を引き起こします。このセメントの劣化現象を風化といい、風化によって1ヶ月の間に強度が5〜10%ほど低下するといわれています。
まとめとして、セメントに水を加えるとケイ酸カルシウム水和物、水酸化カルシウム、エトリンガイトなどが生成されます。また、硬化したセメントは乾燥収縮や風化により強度低下が起きます。そのため、セメントの配合設計時にできるだけ注意しながら決定していく必要があります。