桐はキリ科キリ属の広葉樹であり、日本では北海道を除き全国的に植生しています。桐は家紋などにもよく見られ、古くから日本人の暮らしの中にあり、日本人の文化や歴史とは深いかかわりがありました。例えば、昔は女児が誕生すると桐を植え、嫁がせるときに切り倒してタンスなどの家具調度品にしていたそうです。また、桐は非常に燃えにくい性質を持っており、家の周りに防火用として植えていたそうです。ちなみに、桐の語源は「切れ」ば早く成長するため、木目を意味する「きり(木理)」が美しいための2種類あるそうです。
桐の気乾比重は0.19〜0.30と日本の木材の中で最も軽いです。そのため、加工が極めて容易であり、狂いと割れも少なく、糊付け加工も容易、酢酸ビニ ル樹脂接着剤による接着性が良いなど、独特な材質を持っています。また、吸湿性や吸水性が著しく小さく、含水率1%当りの平均収縮率の値は接線方向で0.23%、半径方向で0.09%と非常に小さいことが分かります。これは、含水率の変化に伴う収縮率・膨張率の値が国産木材で最小を意味しています。さらに、熱伝導率の値も小さく、炎に対しては表面が炭化してしまい、その後は熱が通りにくくなります。内部を火から保護する性能が大きいこと、湿気を吸わず通さないことから着物などを入れる桐箪笥の材料として利用されてきました。
桐の圧縮強さは2.0 [kN/cm2]、引張強さは6.0 [kN/cm2]、曲げ強さは3.5 [kg/cm2]、 せん断強さは0.55 [kg/cm2]、曲げ弾性係数は500 [kN/cm2]となっており、強度としてはそこまで高くありません。そのため、梁や柱などの重要な部材には使用しにくいです。
桂の辺心材ともに淡灰白色、たまに紫色を帯びており、辺心材の境界は不明瞭です。また、伐採後に材をそのまま使うと材面が灰褐色を帯びた汚ない色に変わってくるので、ある期間の間は日光と雨露にさらすアク抜きが行なわれます。現在は、国内市場の9割近くが輸入材となっており、昔の価格の1/5~1/8の価格で手に入るようになっています。
まとめとして、桐は耐火性、耐水性がともに高く、内部を保護したい家具を作るときに利用されます。強度はそこまで高くありませんので、重要な部材への使用には向いていません。また、9割近くが輸入材となっており、安価で入手することができます。