松はマツ科マツ属の針葉樹です。赤道直下の熱帯・亜熱帯から北極圏まで北半球に広く分布しており、松の種は食用、木は木材、樹脂は松ヤニ、松ぼっくりは観賞用と木全体が利用されています。また、竹や梅とともにめでたい取り合わせとして、門松にも利用されています。松は古くから神聖な木とされており、神が木に宿るのを「待つ」が語源といわれています。
日本に自生する松は8種類ほど存在しており、有名なものとしては葉が二葉の黒松、赤松、五葉の五葉松が挙げられます。黒松は樹皮が灰黒色であり、葉の先端に触れるとチクチクした痛みを感じます。海岸の防風林として造林されたことから海辺に近い処で見られ、丈夫で育てやすいことから盆栽としても親しまれています。ちなみに、黒松の周りには松茸は生えてきません。一方、赤松は樹皮が赤茶色であり、内陸部や低山に自生しています。赤松の周りには松茸が生えてきます。また、黒松が雄松と呼ばれるのに対して、赤松は雌松と呼ばれています。その他の有名な松としては、五葉松、琉球松、蝦夷松、唐松があります。
赤松の気乾比重は0.42~0.62、黒松の気乾比重は0.44~0.67とほぼ同じ値を示します。そのため、赤松と黒松の使用用途が区別されることはあまりありません。また、一般的に二葉松が0.55程度に対して、五葉松類は0.45程度とやや軽いことが多いです。そのため、硬い二葉松は梁や桁に用いられ、軟らかい五葉松類は水道用木管、木型、曲物など加工が必要なものに用いられます。ちなみに、二葉松は土の中では腐りにくいため、橋梁や土中杭としても利用されます。
松は杉や檜と比べて耐朽性に劣るとされており、含水率が上がるとカビなどの腐朽菌や青変菌が発生しやすくなります。青変菌は材質を本格的に損なうものではありませんが、見た目は悪くなります。一方、赤松と黒松の圧縮強さは4.5 [kN/cm2]、引張強さは14.0 [kN/cm2]、曲げ強さは8.5〜9.0 [kg/cm2]、 せん断強さは0.90〜0.95 [kg/cm2]、曲げ弾性係数は1050〜1150 [kN/cm2] と全てにおいて桧や杉よりも強いです。しかし、乾燥時にねじれが発生しやすく、柱などへの使用は向いていません。
松の辺材は黄白色、心材は淡黄褐色で両者の境はやや不明瞭です。 松は香りの良さや経年変化と共に素晴らしい色艶を出すことから文化財となるような建築物の建材としてよく用いられていますが、生産数が少なく伐採時期も限られているため、全国的に流通量は少ないです。
まとめとして、松の木材は強度が優れている、香りが良い、年月と共に色が綺麗になるなどの特徴が挙げられます。また、松は二葉松類と五葉松類に大別することができ、二葉松類は硬いことから柱や梁などの重要な部分に、五葉松類は軟らかいことから加工材に用いられます。