火山地帯における工学的問題としては次のようなことが挙げられます。
①地質が複雑。
②未固結の土層が存在する。
③多量の地下水を含有している。
④山麓部に高い被圧地下水が存在している。
⑤温泉が発生する。
⑥温泉の変質作用を受けた岩石が変質岩になり膨張性を示す。
⑦地形が不安定で斜面崩壊が起きやすい。
火山地帯における建設工事で特に問題となるのがトンネル工事とダム建設です。トンネル工事で多量の地下水や温泉が湧水すると未固結の土層が崩壊したり、温泉によって変質作用を受けた安山岩は暗緑色の変朽安山岩という膨張性岩となるため、工事は困難を極めます。トンネル難工事の有名ものとして丹那トンネルを挙げておきます。
16年の歳月を費やした総延長7.8 [km] の丹那トンネルには丹那断層を初めとする諸断層が分布しており、破砕帯を形成していました。そのため、大量の湧水に伴う崩壊が幾度も起きていました。また、地下水がトンネル内に排水されたため、丹那盆地に渇水問題を引き起こしました。さらに、断層に沿って上昇した熱水によって変朽安山岩が形成されており、応力解放に伴う膨張により、掘削断面が狭くなる問題も抱えていました。この条件だけでも大変なのに、昭和5年にはM7.0の北伊豆地震が発生し、丹那断層とトンネルは約2 [km] の左横ずれ断層が生じることになりました。
ダム建設時はダム貯水池の漏水の原因となる透水層の存在や貯水池周辺の山体崩壊(山体の一部が地震や噴火などによって大規模な崩壊を起こす現象)が問題となります。このようなことから、火山地帯はトンネル工事とダム建設にとって好ましい地質条件を備えていません。
まとめとして、火山地帯はトンネル工事とダム建設にとって好ましい地質条件を備えていません。