火山地帯では火山活動と特有の地質条件により、火山災害と総称される被害がしばしば発生します。火山災害には様々なものがあるのですが、ここでは火砕物降下、火砕流、溶岩流、火山泥流、雪泥流について述べていきます。
①火砕物降下
火砕物は火山岩塊(64mm以上)、火山礫(2〜64mm)、火山灰(2mm以下)、軽石(二酸化ケイ素が多いため白く多孔質な)、スコリア(二酸化ケイ素が少ないため黒く多孔質、酸化鉄を含む場合は赤褐色)などの総称であり、火砕物降下が起きると災害を引き起こします。例としては1707年に起きた富士山の宝永大噴火であり、江戸にまで火山灰が堆積しました。現在起きている火砕物降下としては毎年のように火山灰を降下させている桜島が挙げられます。
②火砕流
火砕流は火口から噴出した高温(100℃〜1000℃)の火砕物がガス・液体とともに粘性の低い流体として高速で地表を流下する現象です。流下速度は100 [m/s] と非常に速く、火砕流が起きてから逃げても間に合いません。
火砕流発生の危険性は多くの火山で指摘されますが、過去の災害履歴や現在の活動度から十勝岳(北海道)、北海道駒ケ岳(北海道)、有珠山(北海道)、浅間山(長野県)、雲仙岳(長崎県)、霧島山(宮崎県と大分県)、桜島(鹿児島県)などがとくに危険が大きいと判断されています。
③溶岩流
溶岩流は火口から噴出した高温(100℃〜1000℃)の溶岩が重力の作用で自然に流下する現象です。玄武岩の場合は低粘性で流動性が大きく、溶岩の層は薄いです。一方、安山岩や流紋岩の場合は高粘性で流動性が小さく、溶岩の層は厚いです。
④火山泥流
集中豪雨などにより水を含んだ大量の土砂が谷沿いを津波のように流れる現象を土石流といいますが、火山活動を起因とする土石流は火山泥流と呼んでいます。土石流は土や石が流下していきますが、火山泥流は火山灰が流下していく割合が多く、土石よりも泥のほうがイメージに合っているからです。火山泥流は発生原因によって河川流入型、融氷雪型、火口湖決壊型、堰止湖決壊型、降雨型に分けられます。
河川流入型:火砕流が河川に流入して流下する場合
融氷雪型:噴火時に融解した火口周辺の積雪・氷河が火砕物と混合して流下する場合
火口湖決壊型:噴火時に決壊した火口湖の湖水が堆積物を侵食・混合して流下する場合
堰止湖決壊型:火砕物が河川を塞ぎ形成していた天然ダムの堰止湖が決壊し、湖水と埋塞した火砕物が流下する場合
降雨型:火砕物降下後の降雨により堆積物と混合して流下する場合
⑤雪泥流(スラッシュフロー)
雪泥流またはスラッシュフローは雪どけ水や雨水などによって積雪層が崩れ落ちてくる際に堆積物を侵食・混合して流下する現象といい、土石流の一種といえます。富士山の東斜面では数年に一度の割合で発生しており、富士山を例にメカニズムを述べていきます。
富士山の東斜面は宝永大噴火により火山礫が厚く堆積しており、森林は埋まっています。この礫層は透水性であるため、相当の降雨量であっても土石流は発生しません。しかし、冬になると間隙水が凍結し、不透水層となります。春には礫層の表面や積雪層は徐々に解凍されていくのですが、そのときに降雨が発生すると、凍結部より上は土石流となります。この現象は古くから起こっており、地元では雪代と呼ばれて恐れられていました。
まとめとして、火山地帯で発生する災害としては火砕物降下、火砕流、溶岩流、火山泥流、雪泥流があります。