平面線形は直線、円曲線、緩和曲線によって構成された線形をいいます。円曲線には単心曲線、複心曲線、背向曲線、反向曲線があります。また、緩和曲線は直線から一定の曲率をもつ円曲線の間を繋ぐための曲線であり、通常はクロソイド曲線が利用されます。円曲線と緩和曲線については測量学 10.1 路線の線形〜測量学 10.3 緩和曲線を参照してください。
①最小曲線半径
自動車が曲線部でも直線部と同様に安定した走行をするため、曲線半径を求める必要があります。曲線半径は道路の曲線部を走行する自動車にかかる遠心力や摩擦力から求めることができます。
このとき、Zは摩擦力 [N]、Gは自動車の総重量 [N]、Rは曲線半径 [m]、vは設計速度 [m/s]、Vは設計速度 [km/h]、fは横すべり摩擦係数、iは路面の片勾配です。
しかし、いちいち計算するのも面倒なので、道路構造令では設計速度と片勾配に応じた最小曲線半径が規定されています。しかし、道路設計をする際はまずルートを決定し、そのルートから曲線半径が決まることが多いです。そして、片勾配を決定し、横すべり摩擦係数が下表より小さいかどうかを確認します。大きければ設計をやりなおします。
②最小曲線長
自動車が曲線部を走行をするとき、曲線長が短いと煩雑なハンドル操作が必要となり、安全性が低くなります。そこで、最小曲線長は交角が7°以上と7°未満のときで次のように規定されています。曲線長は通過時間が6秒以上が適当だといわれており、最小曲線長は各設計速度に対して交角が小さい道路を6秒間走行したときの長さとしています。
交角が小さいほど曲線長は実際より短くみえ、道路が急に折れ曲がっているような錯覚を受けます。その境界が7°であり、交角が7°未満の場合は道路が滑らかに曲がっているように見せるため、曲線長を長くする必要があります。ただし、交角が2°未満の場合は2°とします。
③片勾配
道路の直線部は排水するために拝み勾配になっており、曲線部は排水と遠心力を考慮して片勾配(道路の曲線部の内側を低くした横断勾配)になっています。片勾配は大きくしすぎると横滑りが起きやすく、降雨時や凍結時の発進でスリップしやすくなります。そこで、通常時の最大片勾配は10%を限界としています。ただし、自転車道を設置しない道路では自転車が車道を通行することになるので、最大片勾配を6%としています。
片勾配は設計速度と曲線半径から求めることができます。
④曲線部の拡幅
自動車が曲線部を走行するときは自動車の後輪が前輪よりも内側を通ります。そのため、曲線部は直線部より幅員を広くする必要があり、その拡幅量は下表のように決まっています。また、車線の拡幅は内側に行うことを基本としています。
上り車線と下り車線の曲線部はそれぞれ曲線半径が異なるため、拡幅量も異なってくるのですが、車線の曲線半径が35 [m] 以上の場合は道路中心線の曲線半径から拡幅量を求めてよいことになっています。曲線部内側の車線の方が必ず曲線半径が小さくなりますが、曲線半径が35 [m] を超えると不足する内側の拡幅量が5 [cm] だけになり、誤差の範囲になるからです。
⑤緩和区間
自動車が円滑に走行するためには遠心力が急激に変化しないようにする必要があります。そのため、直線と曲線の間に緩和曲線を設けます。緩和曲線長は遠心加速度の変化率(躍度)から求める方法とハンドル操作時間から求める方法があります。一般に遠心加速度の変化率は0.3〜0.9 [m/s3] の値がとられていますが、道路構造令では片勾配を考慮し許容値を0.50〜0.75 [m/s3] としています。また、遠心加速度の変化率から緩和曲線長を求める方法としてはショーツ式とショーツ補正式があります。
このとき、Pは遠心加速度の変化率 [m/s3]、Lは緩和曲線長 [m]、iは緩和曲線終点の片勾配、i0は緩和曲線始点の片勾配です。
緩和曲線長をハンドル操作時間から求める方法は次式によって表されます。
ハンドル操作上最も無理のない時間は3〜5秒程度であり、道路構造令では走行時間を3秒とし、設計速度から緩和曲線長を下表のように規定しています。実は、走行時間が3秒の場合は曲線半径が小さいときのショーツ式を満足してはいません。しかし、これは曲線半径が道路構造令の規定値以下の場合であり、ショーツ補正式は満足しているので、実質的にそう影響はありません。
道路の線形設計でクロソイドを使用する場合、クロソイドパラメーターの最小許容値の指針を与えておいた方が実用的な場合が多いです。クロソイドパラメーターの最小許容値はショーツ式から求めることができ、ショーツ式を用いる理由としては安全側に見積もれるからです。
曲線半径は大きくなると移動量が少なくなるため、その場合は緩和曲線を省略してもよいことになっています。緩和曲線(クロソイド曲線)を設ける場合の移動量は0.2 [m] 以上のときであり、そのときの曲線半径を限界曲線半径と呼んでいます。また、限界曲線半径はショーツ式とクロソイドパラメーターの式から求められます。
このとき、Sは移動量 [m] です。
上式に各種の設計速度を代入して、限界曲線半径を求めていきます。しかし、この値は緩和曲線長を最小として考えた場合であり、本来はもう少しの余裕が必要です。そこで、道路構造令では限界曲線半径をだいたい倍にした標準限界曲線半径を推奨しています。
まとめとして、道路の平面線形を設計するときは最小曲線半径、最小曲線長、片勾配、曲線部の拡幅、緩和区間などの規則を守る必要があります。