9.5 三辺測量

三辺測量は水平角の観測なしに、光波測距儀で辺長を観測するだけで新点の位置を特定できる測量です。従来、長距離の長さを測るのは難しく、この測量方法は一般的ではなかったのですが、光波測距儀が登場したことにより一般的になりました。三角測量に比べると若干誤差が低く抑えられて、観測が容易と言う利点があります。三辺測量は主に一等三角点、二等三角点、三等三角点の改測に使用されました。

三角測量が角度から距離や座標を特定する方法とすれば、三辺測量は距離から角度や座標を特定する方法といえます。下図のような三角形の距離を測定した場合、角度の式は余弦定理から次のように表されます。

このように余弦定理を用いて三角形の内角を全て求めていきます。あとは、既知点である測点1の方向角T12が分かれば、三角測量のときと同様に、次式から方位角を全て計算することができます。

各測点の方向角が分かれば、方位、緯距、経距、調整緯距、調整経距、合緯距、合経距の順に計算していけば大丈夫です。詳しい内容については、6.3 多角測量の計算(方位角)6.5 多角測量の計算(閉合誤差)を参照して下さい。

三角測量は角条件、方位角条件、辺条件に対して調整した値から方位を求めていましたが、三辺測量は計測結果そのままの値を用いて方位を求めています。そのため、コンパス法則またはトランシット法則を使って緯距と経距を調整する必要があります。

現在は、三角測量や三辺測量といった基準点測量は行われなくなっており、代わりにGNSS測量が主流となっています。GNSSは、Global Navigation Satellite Systems の略称で、全球測位衛星システムと訳されます。人工衛星からの電波を受信して位置を決定する測量方法で、上空の視界が開けていれば他の基準点が見通せなくてもよく、現在の基準点測量のほとんどがこの測量方式となっています。GNSSを使用した測量として最も有名なのがGPS測量です。

まとめとして、三辺測量は光波測距儀などの距離測量によって得られた辺長と既知点の方位角から三角網の内角を計算し、座標計算を行う測量です。三辺測量は、三角測量より誤差が少なく、観測が容易です。しかし、三辺測量や三角測量は現在ほとんど行われておらず、GNSS測量(GPS測量)が主流となっています。