9.4 三角網の調整

下図のような三角網の調整は、次の三つの調整条件を満たすように行います。

①角条件に対する調整(第一調整)

②方位角条件に対する調整(第二調整)

③辺条件に対する調整(第三調整)

本基線12の方位角はT12、検基線56の方位角はT65、既知辺に対する角をα、未知辺に対する角をβ、残りの角をγとします。

①角条件に対する調整(第一調整)

各三角形の内角の和は180°です。許容範囲内にある角誤差と角誤差調整量は次式によって表されます。

このとき、vは角誤差、εは角誤差調整量、nは三角形の数です。

②方位角条件に対する調整(第二調整)

まずは、既知方位角から未知方位角を求めていきます。

+γは既知辺から時計回りの場合であり、-γは既知辺から時計回りの場合を意味しています。また、検基線の既知方位角は次式によって表されます。

計算によって求められた既知方位角は元からある値と同じにならないといけないので、このときの角誤差(閉合誤差)および角誤差調整量の式は次のようになります。

③辺条件に対する調整(第三調整)

三角網を三角形に分け、既知辺と未知辺について正弦定理を適用します。

上式をまとめていきます。このとき、本基線12ををb0、検基線56をbと置き換えます。

よって、角誤差(角観測誤差)は次式のように定義されます。

また、対数をとり、マクローリン展開すると、次式のように表すこともできます。同じ式変形を9.3 四角形の調整でも行っておりますので、詳しい内容はそちらを参照してください。

続いて、角誤差調整量を求めていきます。

ここで、αの式に加法定理、マクローリン展開を用います。

同様に、βの式にも加法定理、マクローリン展開を用います。

では、これらの式をまとめていきます。

従って、辺条件に対する誤差の調整は次のようになります。

三角網の精度は、大三角測量で1/100,000以上、少三角測量で1/5,000〜1/10,000以上、河川測量で1/6,000以上とされることが多いです。三角網の精度の計算は辺条件調整後に行い、必要な精度が得られていない場合は再測しないといけません。三角網の精度は次式によって求めることができます。

各点の座標計算をするためには、各辺の長さと各方位角を求める必要があります。各辺の長さは次式によって表すことができます。

また、各点の方位角も求めていきます。

よって、座標の位置を求めることができます。座標位置は三角網を閉合トラバースに見立て、合緯距および合経距から求めます。座標の計算は6.4 多角測量の計算(緯距・経距)6.5 多角測量の計算(閉合誤差)を参照してください。このとき、角条件、方位角条件、辺条件に対する調整を行っているので、緯距および経距の調整を行う必要はありません。

では、例題を1問解いていきます。

例題1:下図のような三角網において以下の表に示す結果を得た。角条件、方位角条件、辺条件の調整を行い、辺長計算と座標計算を行え。ただし、本基線長は134.2530 [m]、本基線の方位角は15°26'00"、検基線長は126.4421 [m]、検基線の方位角は199°08'31"である。

まずは、角条件による調整量を求めていきます。

角条件による調整量の結果をまとめていきます。角誤差が負の場合は、角誤差調整量を正の値にして加えていきます。

次に、方位角条件による調整量を求めていくのですが、その前に必要な方位角を求めておきます。

では、方位角条件による調整量を求めていきます。

方位角条件による調整量の結果をまとめていきます。閉合誤差が負の値のときは、角度γを反時計回りに観測している三角形のαとβは正の符号、γは負の符号となります。一方、角度γを時計回りに観測している三角形のαとβは負の符号、γは正の符号となります。時計回りまたは反時計回りの判断は既知辺から未知辺に向けてどっち方向に回っているかで決まります。今回は、三角形①と③が反時計回りです。また、調整量はαとβはεr/2になることに注意してください。

さらに、辺条件による調整量を求めていくのですが、その前に角観測誤差を求めていきます。

では、角誤差調整量を求めていきます。

辺条件による調整量の結果をまとめていきます。角誤差調整量の符号は、角観測誤差が負の場合はαが負、βが正となります。理由は、bΠsinβよりb0Πsinαが大きいので、αを小さくする必要があるからです。また、三角形の内角も調整します。調整するときは切り上げる量が大きいもの、切り捨てる量が大きいものを選ぶ必要があります。今回は橙で塗りつぶしたところが調整した部分になります。

最後に、辺長計算と座標計算をしていきます。まずは、各測線の辺長(辺長計算)を求めていきます。

続いて、方位角と方位を求めていきます。方位の求め方については6.3 多角測量の計算(方位角)を参照して下さい。

各測線の辺長と方位が求まりましたので、緯距、経距、合緯距、合経距(座標計算)を求めていきます。詳しい内容については6.4 多角測量の計算(緯距・経距)および6.5 多角測量の計算(閉合誤差)を参照して下さい。

既知点6の座標と計算結果の座標が合っているかを確認をして終了となります。

まとめとして、三角網は、角条件、方位角条件、辺条件の三条件に対して調整を行います。角条件に対する角誤差が負の場合、調整量は正となります。方位角条件に対する角誤差(閉合誤差)が負の場合、角度γを反時計回りに観測している三角形のαとβは正、γは負となります。辺条件に対する角誤差(角観測誤差)が負の場合、αは負、βは正となります。ややこしいので、その都度確認して下さい。