10.3 緩和曲線

緩和曲線には、クロソイド曲線三次放物線、レムニスケート曲線、ベジェ曲線などがありますが、ここでは道路で一般的に使用されるクロソイド曲線、鉄道で一般的に使用される三次放物線について説明していきます。

①クロソイド曲線

クロソイド曲線は下図のように表され、曲率が曲線長に比例して一様に増加する曲線です。曲率半径をR、曲線長をLとすると次の関係式が成り立ちます。ちなみに、A1からB1が第一クロソイド曲線、B1からA2が単心曲線、A2からB2が第二クロソイド曲線です。

このとき、Rは曲率半径 [m]、Lは曲線長 [m]、Cは定数 [1/m2]、Aはクロソイドパラメーター [m]、τは接線角、σは極角、Tkは短接線長 [m]、TLは長接線長 [m]、S0は動径 [m]、Nは法線長 [m]、U、V、Wは投影長 [m] です。

クロソイドパラメーターはクロソイドの大きさを決定する値であり、長さの単位を持ちます。また、RL=A2クロソイドの基本式といい、次のように式変形が行えます。

クロソイドパラメーターが1のときのクロソイド曲線を単位クロソイドといい、RとLの代わりに単位長rとlが用いられます。単位クロソイドの諸要素を計算したものとして単位クロソイド表(クロソイドポケットブックなど)があり、いちいち計算しなくても表の値を直接読み取れば大丈夫です。余談ですが、単心曲線では任意点の弧長をlで表していましたが、クロソイド曲線では曲線長の単位長を表していますので注意して下さい。

単位クロソイドの式を使って、座標位置も求めることができます。

また、dxとdyの式を三角関数から導き、上式を代入します。

これらの式を積分していくのですが、これはフレネル積分であり、次式のようにマクローリン展開して数値積分します。

さらに、クロソイドパラメーターと接線角を式変形すれば、単位クロソイドの座標位置が求まります。

その他の単位クロソイドの諸量は次式によって求めることができます。

これらの値をまとめたものが単位クロソイド表となります。

クロソイド曲線の設置は、①道路の設計速度から決定していきます。②道路の設計速度が決まると、曲率半径、クロソイドパラメーター、曲線長の望ましい値を定めます。クロソイドパラメーターはR/3≦A≦Rのときに視覚的に滑らかな線形となることが経験的に知られています。

また、③曲率半径とクロソイドパラメーターから単位長rを求め、rから単位クロソイド表を使ってクロソイド曲線の諸量(座標位置 (X,Y)、極角σ、弦長S0など)を求めます。最後に、④始点から各中心杭、曲線始点、曲線終点までの距離を計算し、クロソイド曲線では各測点の弦長、座標位置、極角、動径を求め、単心曲線では各測点の弦長、偏角を求めます。

そのため、クロソイド曲線の設置は極角弦長法、極角動径法、座標法(接線オフセット法)によって実施され、単心曲線は偏角弦長法によって実施されます。

では、例題を1問解いていきます。

例題1:第一クロソイド曲線の始点の追加距離が40.000 [m]、交角が75°00′00′′、曲率半径が70.000 [m] で、単心曲線の両側にクロソイドパラメーターが55.000 [m] のクロソイド曲線を設置せよ。

まずは、クロソイド曲線の単位長rを求めていきます。このとき、単位クロソイド表が小数点6桁まであるので、それに合わせていきます。

次に、単位クロソイド表から単位長lを求めていきます。

極角や接線角も求めていきます。同じ計算が続くので、結果をまとめておきます。

続いて、単心曲線の基礎式を求めていきます。

また、曲線始点および曲線終点の位置も求めておきます。

では、第一クロソイド曲線の中心杭の弦長、座標位置、極角、動径を求めていきます。第一クロソイド曲線は極角弦長法、極角動径法、座標法(接線オフセット法)により設置します。

単心曲線の中心杭の弦長、偏角を求めていきます。単心曲線は偏角弦長法により設置します。

最後に、第二クロソイド曲線の中心杭の弦長、座標位置、極角、動径を求めていきます。

ちなみに、途中に障害物があり、クロソイド曲線の始点から見通しが悪い場合は弦角弦長法により測設を行っていきます。

②三次放物線

線形としてはクロソイド曲線の方が良いのですが、式が簡単で曲線設置が容易なので、鉄道に多く用いられています。ここでは、三次放物線の一般式のみ示しておきます。

まとめとして、一般的に用いられる緩和曲線としてクロソイド曲線、三次放物線があります。クロソイド曲線は曲率半径が曲線長に比例して一様に増加する曲線、三次放物線は式が簡単で設置が容易な曲線です。