路線の平面曲線に使われる円曲線には、単心曲線、複心曲線、反向曲線、背向曲線とありますが、いずれも単心曲線を組み合わせたものといえます。下図は単心曲線を詳しく描いたものになります。
単心曲線は曲率が一定な円弧であるため、交角を現地計測し、曲率半径を合理的に設計することによって、単心曲線の設置に必要な諸量を計算によって求めていきます。
道路の曲率半径は、平面線形全体の調和を考慮して、なるべく大きな値を採用しないといけません。そこで、曲率半径は道路構造令により最小曲率半径が規定されています。
単心曲線の設置方法は、極座標法と直角座標法に分けることができます。また、極座標法には、偏角法と偏距法があります。一方、直角座標法には、中央縦距法、接線オフセット法、長弦オフセット法があります。これらをまとめると次のようになります。
①偏角弦長法
偏角弦長法は曲線の路線を設置するときに最も一般的に用いられる方法で、曲線始点にトランシットを据え付け、偏角δの視準線上と曲線長との交点Pを求めて曲線設置を行います。
路線測量において路線を現地に設置するときは、路線の中心線上に20 [m] 間隔で中心杭を打設していきます。この中心杭には番号がつけられており、例えばNo.10の中心杭の位置は始点から10×20=200 [m] の位置となります。また、路線の始点から曲線部までの距離を追加距離といいます。
一方で、20 [m] の任意点の弧長は曲線であるために測定することが非常に困難であり、多くの時間と費用を要します。そこで、任意点の弧長の代わりに任意点の弦長が使用されます。任意点の弦長は次式によって表され、任意点の弦長による誤差をまとめたものが下表になります。
表の結果から、任意点の弦長を使用することによる誤差は曲率半径が200以上だと10 [mm] 以下であり、単心曲線の中心杭の測設には実務上問題ないことが分かります。ちなみに、弧長と弦長との差を表す式は次のように導出することもできます。
②弦角弦長法
弦角弦長法は始点から中心杭の測設点までに障害物がある場合に使用される方法であり、偏角弦長法と併用して使用される場合が多いです。障害物がある場合は既設の中心杭に測量機器を移動させて、測設を行っていきます。
左図は曲線始点から中心杭を測設するときの偏角、中図は中心杭No.3からNo.4、No.5、No.6を測設するときの偏角、右図は中心杭No.4からNo.5、No.6を測設するときの偏角を表しています。
③偏距法(接線偏距法と弦偏距法)
接線偏距法と弦偏距法はトランシットを用いずに、ポールと巻き尺だけで単心曲線を設置する方法であり、高い精度を要求されないときに便利な方法です。接線偏距法と弦偏距法の図および式は次のように表されます。
④中央縦距法
中央縦距法は下図のように順次中央縦距を求めていく方法で、偏角弦長法により設置した単心曲線を検査するときなどに利用されます。中央縦距法の欠点としては、中心杭を20 [m] 間隔で設置できないことが挙げられます。中央縦距および弦長は次式によって表されます。
⑤接線オフセット法
接線オフセット法は、下図に示すように曲線始点を座標の原点、曲線始点Aと交点I.P.を結ぶ線をY軸、曲線始点Aと原点Oを結ぶ線をX軸とし、座標点を求めることで中心杭を設置する方法です。座標点は次式によって求めることができます。
ただし、偏角がI/4を過ぎる中心杭の測設は、オフセット量が次第に大きくなる理由から、曲線終点を原点として行っていきます。この接線オフセット法は、障害物があるために偏角弦長法が使用できないときや偏角弦長法により測設した単心曲線の照査するときに利用されます。
⑥交点に杭を測設できないとき
交点が海中や山中にあり測設できない場合は、単心曲線の接線上に見通しのきく点を2点とり、距離を求めていきます。
上図の△VPQに正弦定理を適用していきます。
すると、T.L.からAPとBQの距離を求めることができます。
例題1:交点から始点までの距離が111.50 [m]、曲線半径が200 [m]、交角が36°20′20′′の単心曲線を偏角弦長法により測設せよ。また、中央縦距法によりM1〜M3までを計算せよ。さらに、接線オフセット法により単心曲線を測設せよ。ただし、中心杭の間隔は20 [m] とする。
まずは、単心曲線の基礎式を求めていきます。
次に、追加距離、弦長、偏角を求めていきます。
では、偏角弦長法の結果をまとめていきます。
続いて、中央縦距法によりM1〜M3までを計算していきます。
最後に、接線オフセット法を使って、偏角と座標位置を求めていきます。
まとめとして、単心曲線を設置する一般的な方法として、偏角弦長法、弦角弦長法、偏距法、中央縦距法、接線オフセット法などがあります。