水を張った容器をゆすり放置すると、容器内の水面はあるモードをもって上下に振動し続けます。副振動はこれと同じ現象が湾や海峡などで発生する現象であり、潮汐・高潮・津波以外の理由で潮位が変動する場合を指します。主振動と対をなす用語として使用されており、主振動は潮汐による振動を指します。
閉鎖水域(湖沼など)または一部開放水域(港湾など)では、低気圧や台風などによる外部じょう乱によって水面変動が起きます。この水面変動の周期と湖沼や港湾が持つ固有周期が近いと共振現象によって副振動が引き起こされます。そのため、湖沼や港湾の固有周期を理解することが非常に重要といえます。この現象は古くから知られており、長崎地方ではアビキ、伊豆地方ではヨタと呼ばれています。
閉鎖水域は波形勾配が小さいので、波は側岸で完全反射され、水域内に完全重複波が形成されます。このような水面変動のモードは数多く考えられますが、実際は節が一つの基本モード、節が二つの1次モードの振動が発生しやすいです。閉鎖水域の固有周期は次式によって表されます。
一部開放水域も同様に完全反射の条件が満たされているとき、基本モードや1次モードが発生します。このときの固有周期は次式によって表されます。
しかし、実際は共振状態に近づくにつれて湾口で渦が生じたり、じょう乱が外海へ放出されたりと理論式より大きくなる傾向にあります。そこで、補正式として以下の式が提案されています。
このとき、aは補正係数、bは閉鎖水域や開放水域の幅 [m] です。
では、例題を1問解いていきます。
例題1:湾長2.5 [km]、湾口幅400 [m]、平均水深12 [m]の長方形湾がある。この湾の固有周期を計算せよ。
では、補正係数を求めた後に、固有周期を計算していきます。
まとめとして、潮汐・高潮・津波以外の理由で潮位が変動する場合を副振動といい、一般に水面変動の周期と水域が持つ固有周期による共振現象が原因となります。