津波は地震による海底地盤の変動、海底火山の噴火、海岸部の大規模な地すべりなどによって引き起こされる長周期波をいいます。津波の「津」は港や船着き場を意味する文字です。沖で津波が発生したときの波高は2〜3 [m] なのに対し、海岸に近づくにつれて波高はどんどん大きくなります。このように、沖では大した波ではないのに、湾や港に進入すると異常に大きくなることから、津(みなと)の波、すなわち津波と呼ばれるようになりました。また、津波の沖での波長は10〜200 [km] ほどあり、波形勾配は10-4〜10-5、相対水深は10-2〜10-3であることから、微小振幅波の長波としても取り扱われます。
津波発生の約9割は海溝型地震による地盤変動によって生じ、そのときの地震と津波の大きさはマグニチュードで表されます。地震のマグニチュードは記号Mを使用するのに対し、津波のマグニチュードは記号mを用いて定義しています。この地震や津波のマグニチュードと被害程度には次表のような関係性があります。
また、平均的な津波のマグニチュードと地震のマグニチュードの関係は次式によって表されます。
地震や津波の総エネルギー量はグーテンベルグとリヒターによって次のように求められました。
このとき、Esは地震の全エネルギー [erg]、Etは津波の全エネルギー [erg] です。1 [erg] = 10-7 [J] となります。
津波のマグニチュードが1のとき、地震の全エネルギーは1023 [erg] になるのに対し、津波の全エネルギーは1022 [erg] です。そのため、津波のエネルギーは地震のエネルギーの10%程度であることが分かります。しかし、この値は大地震のときであり、小さな津波になると1%程度となります。
津波の波速は長波と同じ式で求めることができます。また、波高の変化はグリーンの法則から求まります。
グリーンの法則は次式によって証明できます。
従って、グリーンの法則は浅水変形と屈折を考慮した式であるといえます。回折、海底摩擦、反射は考慮されていないので、実際の波高はこれよりも小さくなる傾向にあります。
津波が海岸に到達し、陸上に遡上するとき、どこまで遡上するかを予測することは防災上重要な問題となります。首藤は一定水深の水路から一定勾配の斜面に長波が入射したときの遡上高を理論的に求めました。
このとき、Rは遡上高 [m]、lは斜面部の水平長 [m]、J0は0次のベッセル関数、J1は1次のベッセル関数です。
また、富樫らは斜面上で砕波する波も含めた実験式として以下の式を提案しました。
では、例題を1問解いていきます。
例題1:湾口の幅が1 [km]、水深が50 [m] のところに波高1.5 [m]、周期15 [min] の津波が来襲したとき、湾奥での津波の高さを求めよ。ただし、湾奥の幅は20 [m]、水深は10 [m] とする。また、水深10 [m] の地点から海底勾配1/100が接続しているときのこの海岸への遡上高も求めよ。
まずは、グリーンの法則から湾奥での津波の波高を求めていきます。
次に、湾奥での波速と波長、ベッセル関数を計算していきます。ベッセル関数はエクセル(besselj)を使えばすぐに求まります。
では、遡上高を求めていきます。
ちなみに、経験式では以下のようになります。
まとめとして、津波は海底地盤の変動、海底火山の噴火、海岸部の大規模な地すべりなどによって引き起こされる長周期波をいい、長波としても取り扱われます。津波の波速は長波の式、波高はグリーンの法則から求めることができます。また、津波の遡上高はベッセル関数を使って計算します。