鉄筋コンクリートは、外力に対して鉄筋とコンクリートが一体となって働くことが必要です。そのためには、鉄筋がコンクリートに定着していることが重要になってきます。まずは、鉄筋端部の定着についての規定について説明します。
①鉄筋の端部はコンクリート中に埋め込んで、鉄筋とコンクリートとの付着力により定着させるか、標準フックをつけて定着させるか、機械的に定着させる必要がある。
②丸鋼の端部には、必ず半円型フックを設ける。
③はりまたはスラブの正鉄筋の少なくとも1/3は、これを曲げないで支点を超えて定着する。
④はりまたはスラブの負鉄筋の少なくとも1/3は、反曲点を越えて延長し、圧縮側で定着するか次の負鉄筋と連続させる。
⑤折曲鉄筋は、その延長を正鉄筋または負鉄筋として用いるか、折曲鉄筋端部をはりの上面または下面に所要のかぶりを残してできるだけ接近させ、上面または下面に水平に折り曲げて水平に延ばし、圧縮側コンクリートに定着する。
⑥スターラップは、正鉄筋または負鉄筋を取り囲み、その端部を圧縮側コンクリートに定着する。
⑦帯鉄筋の端部には、軸方向鉄筋を取り囲んだ半円型フックまたは鋭角フックを設ける。
⑧鉄筋とコンクリートの付着力またはフックにより定着する場合、鉄筋の端部は定着長をとって定着する。
鉄筋の定着長は、鉄筋の種類、コンクリートの強度、かぶり厚さ、軸方向鉄筋の状態によって異なってきます。基本鉄筋長を定める場合にも、諸条件に応じた値を求めることが望ましいのですが、式が極めて煩雑となってしまうため、係数で修正した式で表します。
このとき、ldは基本定着長 [mm]、fbodはコンクリートの設計付着強度 [N/mm2]、cはかぶり厚さと鉄筋のあきの半分で小さい方の値 [mm]、Atはスターラップ鉄筋の断面積 [mm2] です。
また、基本定着長は以下の規定に従います。
①引張鉄筋の基本定着長は上式で求めた値とします。ただし、標準フックを設ける場合は10φだけ減じてもよいものとします。
②圧縮鉄筋の基本定着長は上式で求めた値の0.8倍とします。ただし、標準フックを設ける場合でもこれ以上減じてはいけません。
③定着を行う鉄筋とコンクリート上縁との距離が300 [mm] 未満のとき、引張鉄筋または圧縮鉄筋の基本定着長は1.3倍とします。
鉄筋の定着長は基本定着長を以下のように修正することで求められます。
①実際に配置される鉄筋量が計算上必要な鉄筋量よりも大きい場合、定着長を低減することができます。
このとき、Asは実際上の鉄筋量 [mm2]、Ascは計算上の鉄筋量 [mm2] です。
②定着部が曲がった鉄筋で曲げ内半径が鉄筋直径の10倍以上の場合、折曲げた部分も定着長とします。
③定着部が曲がった鉄筋で曲げ内半径が鉄筋直径の10倍未満の場合、折曲げられていない鉄筋の延長と折曲げた鉄筋の延長との交点までを定着長とします。
では、例題を1問解いていきます。
例題1:下図のような単鉄筋長方形断面の基本定着長を求めよ。ただし、コンクリートの設計基準強度は24 [N/mm2]、鉄筋の設計降伏強度は300 [N/mm2]、引張鉄筋は5-D29、スターラップの断面積は126.7 [mm2]、スターラップの配置間隔は200 [mm]、標準フックを設けるものとする。
まずは、基本定着長の計算に必要な諸量を求めていきます。
次に、基本定着長を求めていきます。
また、標準フックを設けるので10φだけ長さを小さくします。
まとめとして、鉄筋の基本定着長は設計降伏強度、設計付着強度、鉄筋直径から求めることができます。また、鉄筋の定着長は基本定着長を修正することで求まります。