セメントはポルトランドセメント、混合セメント、特殊セメントに分けられます。また、ポルトランドセメントはJISにより6種類が規定されています。
①普通ポルトランドセメント(記号:N)
一般の工事など幅広く利用されているものであり、現在、国内で使用される70%強が普通ポルトランドセメントです。
②早強ポルトランドセメント(記号:H)
早強ポルトランドセメントは普通ポルトランドセメントよりエーライトを多くしたセメントであり、短時間で高い強度が得られます。普通ポルトランドセメントが3日で発現する強度を1日、7日で発現する強度を3日で達成します。また、低温時でも強度を発現します。そのため、寒中工事や緊急工事に使用されます。一方で、早強ポルトランドセメントは水和熱が高く、短期間で温度上昇が起こるために温度ひび割れが発生しやすいデメリットがあります。
③超早強ポルトランドセメント(記号:UH)
超早強ポルトランドセメントは早強ポルトランドセメントよりさらにエーライトを多くし、ビーライトを少なくしたセメントであり、早強ポルトランドセメントが3日で発現する強度を1日で達成します。緊急工事や寒中工事などに使用されますが、現在は製造されていません。
④中庸熱ポルトランドセメント(記号:M)
中庸熱ポルトランドセメントはエーライトやアルミネート相を少なくし、ビーライトを多くすることで水和熱を抑えたセメントです。普通ポルトランドセメントと強度について比較すると、短期強度では劣りますが、長期強度では同等または優れていることが多いです。温度ひび割れや乾燥ひび割れが起きにくく、化学抵抗性(硫酸塩や酸性など)も高いため、大きな構造物(ダムや地下など)に使用されます。
⑤低熱ポルトランドセメント(記号:L)
低熱ポルトランドセメントはエーライトを極端に少なくし、ビーライトの含有量を40%以上にすることで中庸熱ポルトランドセメントより水和熱を抑えたセメントです。低熱、高強度、高流動性を実現するために開発されました。
⑥対硫酸塩ポルトランドセメント(記号:SR)
セメントはアルカリ性を帯びているために硫酸塩に触れると劣化していきます。対硫酸塩ポルトランドセメントはアルミネート相の含有量を4%以下に抑え、硫酸塩に対する抵抗性に特化したセメントです。そのため、海水や土壌、下水、工場排水、温泉地付近での工事で使用されます。
次に、混合セメントについて説明します。混合セメントはポルトランドセメントに高炉スラグ、フライアッシュ、シリカヒュームなどの混和材を混ぜたものであり、JISにより3種類が規定されています。
①高炉セメント(記号:B)
高炉セメントはセメントに高炉スラグを混合したものであり、高炉スラグは水酸化カルシウムや石膏などに刺激されると硬化する性質を持っています。普通ポルトランドセメントと強度について比較すると、短期強度では劣りますが、長期強度では同等程度となります。また、化学抵抗性が大きい、水和熱が小さい、緻密で水密性(圧力作用時でも水を通しにくい性質)が大きいことからダム、河川、港湾工事で使用されます。
②フライアッシュセメント(記号:F)
フライアッシュセメントはセメントにフライアッシュを混合したものです。フライアッシュの主成分はシリカ(SiO2)とアルミナ(Al2O3)であり、セメントに混合すると水酸化カルシウムと常温で反応し、ケイ酸カルシウム水和物(C-S-H)やアルミン酸カルシウム水和物を生成します。また、この反応をポゾラン反応といいます。
フライアッシュは超微細な球形をしているために混ぜると流動性が著しく改善され、ワーカビリティー(作業のしやすさ)が向上します。その他にも、化学抵抗性が大きい、水和熱が小さい、緻密で水密性が大きいなどの特徴を持っています。
③シリカセメント(記号:S)
シリカセメントはセメントにシリカヒュームを混合したものです。シリカヒュームの主成分はフライアッシュと同様に、シリカ(Si02)とアルミナ(Al2O3)であり、ポゾラン反応を起こします。化学抵抗性、水密性が大きいのですが、現在製造されているのはごくわずかとなっています。
ちなみに、高炉スラグ、フライアッシュ、シリカヒュームは含有量によってA種、B種、C種と分類されます。
最後に、特殊セメントについてです。特殊セメントはエコセメント、速硬エコセメントのみJISによって規定されています。
①エコセメント(記号:E)、速硬エコセメント(記号:ER)
高炉セメントやフライアッシュセメントは産業廃棄物を混合材料として使用しましたが、エコセメントは産業産廃物を主原料として使用します。都市ゴミの焼却時の灰や下水道の汚泥などを原料としたセメントであり、塩化物イオンを多量に含むために脱塩を行う必要があります。ポルトランドセメントと比較すると、塩素が僅かに多く含まれていますが、普通ポルトランドセメントと同等の性能を有します。
JISに規定されていない特殊セメントとしては、白色であるため自由に着色が可能な白色ポルトランドセメント、膨張させることで乾燥収縮を抑えた膨張セメント、超早強ポルトランドセメントよりさらに速く固まる超速硬セメント、アルミニウムの原料であるボーキサイトから作ったアルミナセメントなどがありますが、ここでは詳細について省きます。
まとめとして、セメントはポルトランドセメント、混合セメント、特殊セメントに分けることができ、ポルトランドセメントは6種、混合セメントは3種、特殊セメントは2種がJISによって規定されています。