圧密による沈下量を計算するためには、圧力の増加に伴う間隙比、圧縮率、圧縮指数を計算する必要があります。ここではこれら物理量を求めていきます。まずは、間隙比からです。下図は圧密のイメージ図をであり、p1は土被り圧、p2は土被り圧に増分荷重を足したものです。
間隙比の変化量と圧力の変化量を図にプロットすると次のようになります。普通の目盛りでプロットすると土が非弾性(塑性)であるために曲線となってしまいます。そこで、p軸を対数目盛で示すとほぼ直線で描くことができます。また、e-p曲線の勾配を圧縮係数、e-logp曲線の勾配を圧縮指数といいます。
e-p曲線
e-logp曲線
このとき、avは圧縮係数 [m2/N]、Ccは圧縮指数 [m2/N] です。
圧縮指数は、粘土、シルク、砂の順に小さくなっていきます。そのため、圧密による砂の沈下量は非常に小さいことがわかります。下図を参考にして下さい。
圧縮のしやすさを表したものに圧縮率があります。圧縮率は体積弾性係数の逆数で求めることができ、体積弾性係数の式を変形することで間隙比と圧縮係数から求められるようにします。ちなみに、体積弾性係数は材料の硬さ(変形のしにくさ)を表しています。
このとき、Kは体積弾性係数 [N/m2]、βは圧縮率 [m2/N] です。
圧縮率は土質の教科書では体積圧縮係数mvで書かれていることがほとんどですが、ここでは水理学との対応も兼ねてβで表しておきます。圧縮率は水理学 1.4 水の圧縮性でも少し述べていますので、参考にして下さい。
これで必要な情報は揃いましたので、圧密による沈下量の式を示していきます。圧密による沈下量の式は3つあります。まずは、間隙比を用いて圧密沈下量を求める方法です。
このとき、Sは圧密沈下量 [m]、Hは採取した土の層厚 [m] です。
次に、圧縮率を用いて圧密沈下量を求める方法です。
最後は、圧縮指数を用いて圧密沈下量を求める方法です。そのためには、過圧密と正規圧密を理解する必要があります。
正規圧密の場合
過圧密の場合
過圧密から正規圧密の場合
地盤から採取した乱さない粘性土は、土被り圧が除荷されるために間隙比が大きくなり膨張します。その後、再載荷すると始めのうちは曲線となり、除荷したときとほぼ同じような経路を進みます。最終的には除荷前と同じところまで戻るため、このときの土は弾性的な挙動を示すことが分かります。また、鉛直応力(土被り圧)は除化されたにも関わらず、水平応力はそのままなので、静止土圧係数は大きくなります。そのため、このときの土を過圧密状態といいます。
圧密圧力pをそのまま大きくしていくと、グラフは直線を描くようになります。このときにもう一度除荷を行うと、圧密圧力をかけたところから膨張を行うため、土は塑性的な挙動を示すことが分かります。また、再載荷し直線のときの土を正規圧密状態といいます。
弾性から塑性へと変化するときの圧密圧力を圧密降伏応力と呼びます。土の挙動は圧密降伏応力を堺に大きく異なってきます。また、圧密沈下量を求めるときに圧密降伏応力を用いる場合があります。圧密沈下量は、過圧密の場合、正規圧密の場合、過圧密から正規圧密の場合で式が少しずつ違います。
このとき、Csは膨張係数 [m2/N]、pcは圧密降伏応力 [N/m2] です。
では、1問だけ例題を解いてみましょう。
例題:下図のような地盤上に3 [m] の盛土が置かれたときの粘土層底面における圧密沈下量を求めよ。ただし、粘土層は正規圧密状態にあるとする。
まずは、土被り圧p1と盛土による圧力⊿pを求める必要があります。
例題の図に圧縮指数と盛土が置かれる前の間隙比が書かれているので、正規圧密の場合における圧密沈下量の式から求めることができます。
まとめとして、圧密沈下量を求める方法は、①間隙比から求める方法、②圧縮率から求める方法、③圧縮指数から求める方法の3種類あります。圧縮指数から求める場合は、土が過圧密状態なのか正規圧密状態なのか注意する必要があります。また、過圧密から正規圧密(弾性から塑性)へと変化する点を圧密降伏応力といいます。