圧密現象を正しく解明するためには三次元圧密(三方向に変形する場合)を考える必要があるのですが、三次元圧密の多くの考え方はまだ定説になっていないので、ここでは主に一次元圧密(一方向にのみ変形する場合)について考えていきます。また、一次元圧密理論から沈下時間を求めていきます。
テルツァギは圧密の進行を圧密モデルで説明するとともに、圧密の時間経過を理論的に導きました。まずは、下図に示すように粘土地盤の地表面に一様な等分布荷重を載荷したときの一次元圧密を考えます。このとき、過剰間隙水圧の分布は鉛直部分のみとし、間隙水の流れも鉛直方向に限定します。すると、透水量の式は次のようになります。
また、動水勾配とダルシーの法則から速度は次のように求められます。その速度の式を透水量の式に代入します。
次に、排水によって生じる土の体積収縮量について考えていきます。土の体積収縮量は間隙部分の収縮によるものなので、圧縮率から求められます。
土は完全に飽和していると仮定すると、透水量と排水量は等しくないといけないので、次の関係式が成立します。
上式は圧密現象を支配する基本式です。圧密過程において、全応力と圧力は時間的に変化しないので、間隙水圧の減少量と有効応力の増加量は等しくなります。また、間隙水圧を時間微分していきます。
この式を圧密現象の基本式に代入するとテルツァギの一次元圧密方程式が求まります。
このとき、Cvは圧密係数 [m2/s] です。
圧密係数は土の圧密時間を支配する係数であり、圧密の進行する速さに関する係数として使われています。また、テルツァギの一次元圧密方程式を解こうとすると次の係数が出てきます。
このとき、Tvは時間係数 [単位なし]、H'は最大排水距離 [m] です。
H'は採取した土の層厚Hを表しているのですが、排水条件が両面排水(上下に排水可能)か片面排水(上下一方にのみ排水可能)かで値が変わってきます。両面排水の場合はH'=H/2となり、片面排水の場合はH'=Hとなります。また、時間係数は圧密度と密接な関係があります。圧密度とは、一次圧密ににおける圧密の進行程度を表したものであり、次式で求めることができます。
このとき、Uzは圧密度 [単位なし] です。
上式を見てもわかるように、圧密度は時間係数の関数で表すことができ、グラフを描くと次のようになります。
また、圧密沈下量と圧密度があれば、任意時間における圧密沈下量を求めることができます。
このとき、Stは任意時間における圧密沈下量 [m] です。
では、例題を1問解いてみましょう。
例題:両面が砂層に挟まれた層厚8 [m] の粘土層がある。この粘土層の圧密係数は60.5 [cm2/day] であり、圧密沈下量は90 [cm] と推定された。このとき、以下の問に答えよ。
①圧密沈下量の半分に達する時間を求めよ。
②180日後の圧密度および圧密沈下量を求めよ。
③粘土層の下面が不透水地盤であったとき、180日後の圧密度および沈下量を求めよ。
ただし、圧密度と時間係数の関係は次の表を使用すること。
①まずは、圧密沈下量の半分に達する時間です。圧密沈下量が半分ということは、圧密度は0.5になるので、時間係数は表からTv=0.197と求まります。これを時間係数の式に代入するだけです。
②次に、180日後の圧密度および圧密沈下量です。圧密沈下量を求めるには圧密度が必要であり、圧密度を求めるためには時間係数が必要となります。
③最後に、片面排水としたときの圧密沈下量を求めていきます。解き方は②と同様です。
まとめとして、圧密による沈下時間を知るためには圧密係数cvと時間係数Tvまたは圧密度Uzを求める必要があります。また、両面排水と片面排水では最大排水距離H'が異なってきますので注意して下さい。